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子どもは、家を選べない〜その25〜

[674]  真理康子  2010-02-13投稿
霞は、立ち上げを決めるや否や、手作りのチラシを作ると、これ見よがしに、結衣子の家のポストに放り込んだ。
チラシを見ただけで、千鶴子や房子は、長年の言動に気づいて、家庭内での振る舞いを改めるのではないか…結衣子の良識ある父親を知っていて、結衣子を長く知る霞は、大変良識的な期待を抱いていた。

ところが、現実には、そのチラシを見た千鶴子達は、『こんな、ひどい母娘なんて、作り話の中にしかいないな。作りすぎ』だと、自らの所業に結びつけることはなかった。
彼女達の心を具現化した餓鬼は、化粧をしなければ外出も他人にも会えないという、この母娘には別問題であった。
彼女らは、浅ましい自らの行為の自覚すら持つことが出来ない有り様だった。
結衣子の自転車屋の充電器のコンセントを抜き続けてバッテリーを壊し、一台使い物にならなくなった自転車を修理しようと試みた自転車屋のオーナーは、結衣子を見かけると、「そやけど、奥さん。長いこと、えらい化けモンこうたりはりますなあ(飼っておられますなあ)」と、声をかけた。
自分からは、手を出さず、神の裁きで千鶴子と房子がこの世から消えない限りは、こういった馬鹿げた現状は断ち切れないと諦めている結衣子に、近隣の住民は同情し、怒りさえ覚えていた。

残念なことに、霞のアプローチも、近隣住民の怒りも、親族の苛立ちも、千鶴子と房子には通じなかった。

一体、なんで、こんなことになったのかと、結衣子の叔母は涙した。

生きては、自らと向き合えない、この二人が、いったい、どう生きたいのかを知る者はいなかった。

心の病とは、実に複雑で、本人が望まない限り、改善されないことを、結衣子は知っていた。

万が一、当人が、自覚し、反省した処で、結衣子に与えた長期のストレスの時間が戻るわけではない。

結衣子は、地が繋がった中高齢者に食べ物を与える義務をこなしているに過ぎなかった。

家族愛などない。

結衣子にとっては、家族愛をもって接しているのは、息子の翔だけであるのを自覚していた。

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