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肌とねこ11

[356]  KSKくま  2010-02-18投稿
今関は私を前に歩かせ、すぐ後ろから付いてきた。嫌悪感は消えなかったが、とりあえず震えは止まっていた。しかし、羽交い締めにしようとすれば、難なく捕まえられる距離。気は抜けなかった。
通行人と擦れ違う度にアイコンタクトを取ろうとしても、相手は目を反らせて行ってしまう。四十オヤジと若者の組み合わせは凝視出来ないオーラを放つらしい。それとも今関と私が最も妖しい関係なのが感じられるのだろうか?
どちらにしてもダメだった。
マンションの前で私は肩を落とした。
『誰もたすけてくれない』
その実感が湧いて来て、涙がこぼれた。また無理矢理レイプされることを覚悟した。

そして心に決めた。
今関と別れたら警察にちゃんと言う・・・。

だから、あと一回・・・あと一回我慢すれば・・・。

恐怖のエレベーター、廊下。最後に玄関前。いつ襲って来るかわからない今関を待ち構えながら、何度も心中で我が身の不運を呪った。

「中で話しましょう」
抵抗しない私を見ながら今関はいい気になっているようだった。
鍵を開けた先に広がる暗闇に私は気を失いそうな恐怖を見つけた。人生で後にも先にもこんな恐怖を味わうことはないだろうと思った。
それでも、あと一回だけと心の中で繰り返して足を踏み入れた。
その瞬間、すぐ後ろで今関が玄関のライトを点けた。
キックがどこかでニャーとないた。
後でドアが閉まった。
それでもまだ手を出して来ない今関に警戒心を露にしながら、私はリビングのライトを点けて振り返った。

そこには土下座姿の今関がいた。
「ごめんなさい」
今関は床に向かったまま謝った。私はそれを無言で見下ろしていた。
「本当にすみませんでした。ほんの出来心でひどい目に遭わせてしまって・・・」

私はなおも今関の行動の意図が掴めず無言でいた。
すると今関は茶封筒を懐から取り出し、私の方へ突き出した。
「黙って受け取って下さい」
厚みがある茶封筒。私は今関を警戒しながら手を伸ばした。
百枚あった。
帯がついていた。


私はその時、今関と札束を見ながら、ふと思った。
「こいつはバカだ」
と・・・。

餌を二、三日食べていないキックは必死に鳴き続けていた。その声だけが部屋に響いていた。

・・・つづく

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