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トモ・イキ?

[371]  萩原実衣  2010-03-08投稿
花音は、見覚えのある一輪の花が血に染まっていくのをただ…見ていた。「花音!花音!大丈夫?」沙希が呼んでいる声も耳に入らなかった。

運び出された女の子が履いていた靴に見覚えがあった。「(やっぱり…。)」という絶望感が花音を覆った。
立ち尽くしている花音の側を通り抜けた行ったのは、五十嵐だった。
花音に気づく事もなく救急車に乗り去っていった。「沙希、ごめん。今日は…。」花音は、沙希の返事を聴かずに呆然と歩き出した。
どうやって帰っただろう。どのくらいの時間をかけて帰っただろう。
とりあえず、花音は、何も考えられななかった。しかし、かかってきた電話で現実を突き付けた
「…もしもし。」「花音!遅くにごめんね。ゆいちゃんが、交通事故にあって、今から病院に行くけど、花音は、行く?」菜々に突き付けられた事実に「今日は、やめておくよ。」と断った。
花音は、現実から遠ざかることで生きている事を信じたかった。
そして、逃げたかった。花音の頭の中は、あの血の海の映像が焼き付いて離れなかった。
花音は、そのまま眠りについた。
「あれっ?」母親が起こさない事を不思議になってリビングに降りると、母親は、新聞を読みながら紅茶を飲んでいた。
「(ああ…土曜日か。)」その光景は、週末の母の姿だった。
「あらっ、おはよう!どうしたの?珍しい休みの日にこんなに早く。ご飯食べる?」
「あっ、うん。」花音が返事をすると、母親は、朝食を作り始めた。

花音は、母親の読みかけの新聞に目をやると昨日の出来事を事実として知らされてしまった。
朝食をすませ、部屋に戻ろうとすると、母親が呼び止めた。「花音、話したい事があるから時間作っておいて」
「あっ、わかった。テスト終わったらでいい?」花音が言うと母親は、頷き、また新聞を読み出した。
こんな風に母親に誘われた事がなかった花音は、新たな不安の種を抱いた。
花音は、試験勉強に集中しようと机に向かったもののやはり手につかず、菜々に電話をした。
「菜々?昨日、病院行ったんでしょ?ゆいちゃんは…?」花音が聴くと、「うん。生きてるよ。今は…。」と菜々が言った。花音は、菜々が言っている意味がわからなかった。
「今から病院行くから、花音も顔見せてあげてよ」菜々の誘いに断る理由もなく、病院に向かった。
目の前に横たわるゆいは、たくさんの機械に囲まれ、生かされていた。

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