携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> 恋愛 >> ミルトニア?

ミルトニア?

[371]  萩原実衣  2010-03-20投稿
由宇は、なんで呼び止めたか自分でもわからなかった。
「あの〜。凛ちゃんは…チェロ弾いてる時、何思ってるのかなぁ〜と」
(何聞いてんだ?)
「由宇君が言ってくれた事」
「…?」由宇…。
「私は、色や景色がわからないの。どんなに細かく説明されても、わからないの。
だから…私が感じた風や陽の温かさ、雪の静けさ…私全身で感じた事を音にして伝える事で…みんなと同じ景色が見たいの。」
凛は、続けた。
「見えない事は、真っ暗な闇のようだけど…。闇じゃないんだ。それを伝えたい。」
凛の話しは、由宇には重かった。心が痛かった。 「ご、ごめん。引き止めて…」
「ううん。また、食べに来させて頂きます!」
そう言って帰っていった。
由宇は、考えていた。
(見えないけど…。景色を一緒に感じたいか…。)
由宇には、目に見えるものが全てで、それを他の五感で表現する事なんて想像もつかない。
由宇は、凛の事がますます気になっていった。

「あっ!痛ってぇ。」
朝、鏡を見ると、目が腫れて赤くなっていた。
初めて眼科に行った。
「ものもらいだね。はい!目薬」
由宇は、しばらく眼帯の日々を送るはめになった。
「ったく。うぜー」
感覚が狂って苛々させた。
その日は、珍しく学校を休んだ。
由宇は、片目の不自由さに凛の日々の生活の大変さを感じた。
昼間の住宅街の静けさに由宇は、目を閉じた…。
鳥の声、車の音、行き交う人の足音や話し声、射し込む陽の温かさ…。
凛と同じ景色を感じられるかただ…目を閉じた。
明くる日、眼帯姿の由宇に更に女が騒いでいた。まるでファッションの一部のように見えたのだろ。
由宇は、何だか、騒いでいる女どもがうざったく感じ、学校が終わるとバイトに直行した。

由宇は、片目の感覚にやっとなれ、スムーズに運べるようになっていた。
凛が来た。

「いらっしゃい」
「今日は、イカスミにしようかな。パスタで!」
凛が事を弾ませ頼んだ。
「お待たせしました。」由宇がパスタを運んで来た。
「…?由宇君。足怪我したの?それとも、目の怪我?」
「えっ!なっなんでわかるの!」
由宇は、凛が本当は、見えているのかと疑いたくなるほど驚いた。
「歩き方…。足音の幅がいつもより細かくて、何だか、時々テーブルの柱につま先あたってる音だ…。」
「スゲーな。凛ちゃん!」由宇は、感動から恋への転換をちょっぴり感じた。

感想

感想はありません。

「 萩原実衣 」の携帯小説

恋愛の新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス