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recall project #42

[654]  ERROR  2010-03-29投稿
「では、とりあえずここらへんで読むのを止めましょうか、はい。」
11時になり、宮垣先生は生徒に読むのを止めるよう言った。そして、その後宮垣先生はこの「力への意志」の解説をしだした。
「えー、この『力への意志』という作品は、フリードニヒ・ニーチェという19世紀ドイツの哲学者・古典文献学者で、後世に影響を与えた思想家です。「力への意志」とは、ドイツの哲学者フリードニヒ・ニーチェの主要な哲学的概念のことです。詳しくは文章に書いてあったと思うので、時間のあるときに読んで置いて下さい、はい。」
その後も長ったらしい説明が続いた。周りにはダウン寸前の生徒も出始めてきた。
(先生…アンタは世界史の教師か!?)
そう思うほど満足した表情でニーチェについて語っている。
俺も興味が薄れてきた頃、先生がある人物を話に出した。その瞬間俺はその人物に惹かれるようにその話を食い入るように聞いた。その人物とは「アドルフ・ヒトラー」である。
ヒトラーは、ドイツの政治家であり、政権掌握後に「指導者原理」を唱え、民主主義を無責任な衆愚政治の元凶として退けた独裁者の典型とされる人物である。
俺は昔からヒトラーに興味があった。多くの国民を洗脳する人心掌握術、時にはそれに憧れたこともあった。決してヒトラーが行ったことは正しいとは思わないが、俺は確かにヒトラーに惹かれていた。
「実はこの『力への意志』は、ヒトラーに大きく影響を与えたのです。しかし、ヒトラーはこれを間違った解釈をしてしまいました。そして、その『力への意志』の間違った解釈による彼の思想を表したヒトラーの著書は…何かわかりますか?」
先生は生徒に解答を求めたが、誰ひとり答えようとしない。あのメガネも手を挙げる様子もない。
「我が闘争…」
(誰だ?)
生徒達が声の主の方を向く。俺も誰が発言したのかキョロキョロ辺りを見回す。しばらくすると宮垣先生が言った。
「囃子…」
一瞬静かになり、みんな囃子の方を向く。
(あいつ…囃子っていうのか…)
この囃子という生徒、始業式の日の掃除の時間、俺をじっと見つめていた茶髪ロン毛だ。一見おとなしく見える囃子がこんな中で発言するとは意外だった。
「我が闘争、1925年に発行されたナチズムの聖典ともいえるヒトラーの著書…」
囃子は落ち着いた声でもう一度言った。

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