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子どもは家を選べない〜その38〜

[786]  真理康子  2010-04-01投稿
結衣子が、この瞬間を克服し得たことで、生涯、この子を大切に想い続け、結果、何事にも屈することなく成長出来たことを通念で『守る対象が出来れば、人は強くなる』と解説したがるのは一理ある。

だが、本当に大切なことは、結衣子が、愛する相手を強く想って護ろうとした自分を、この小さな闘いの中で『愛せた』ということなのである。

つまり、無意識の内に、【全自分】を肯定し、受け入れ、愛せたのである。
【愛する対象を持つ自分】という、等身大の自分自身の心と『虫をはらう』自分がきっちり同化出来たのである。

これが出来た子どもだからこそ、肉親との軋轢に潰されずに済んだわけである。

この一瞬に、護ろうとする者と護られる者との間に一抹の篤い空気が流れ、幼い二人の心をしっかと掴んだ。

それは、征服欲に基づかない、確固たる自己愛である。

それが認識出来たから、結衣子は強くなれたのである。

征服欲であることに気づかない『愛というもの』が、この世を、どれだけ闊歩していることだろう。

征服欲に基づいた『愛』が、恋人や愛人のみならず、伴侶や家族に向かっていることが、それらを脅かす最たる原因なのである。

何十年連れ添っても、相互に深い信頼が生まれない夫婦や、それに準ずる親子間に本当の愛情が紡げない場合は、当事者が、自分を本当の意味で愛せていないことに起因する。








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