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航宙機動部隊第四章・3

[487]  まっかつ改  2010-04-05投稿
左右の衛士達に純木製の手動扉を開けてもらい、リクは長官執務室に入った。
そこは扉に負けず劣らず重厚かつ格式ある作りをしていて、内装も調度も取り敢えずは常識を大きく逸脱しない範囲で揃えられてはいた。
『やあ観戦武官殿―否、今は総領事全権になっていたな』
やはり純木製の執務卓から立ち上がりながら、ネカイア公爵クラッタ名誉元帥は手を指し示して向かいのソファーを進めて来た。
『で、今日はどんな御用件かな』
言いながら公爵は卓上の鈴を鳴らして従卒を呼び出す。
リク=ウル=カルンダハラは勧められるままにソファーに腰を下ろしながら、
『太子党の事です』
すぐ前のマホガニー製テーブルにジュラルミンケースを置いた。
『今や連中は我が最外縁征討軍最悪の癌です。いち早く取り除かないと病巣は全体に波及し取り返しの付かない事となりましょう』
ネカイア公爵は当たり前と言えば当たり前なのだが、軍服姿をしていた。
胸一杯を占領した勲章の類いが実にぎらぎらとしていて、内心少年に僅かながら失望を与えてはいたが。
その軍服姿で名誉元帥はしばし考え込む素振りを見せた。
一分ばかり少年を焦らしてから、おもむろに彼は口を開いた。
『君とフーバー=エンジェルミ公子とが仲の悪いのは知っている』
老君子はそう言って自らの銀髪をかきあげた。
『だがお互いまだ若く、しかも君に至っては責任ある重職の身ではないか。もう少し歩み寄りがあっても良いのではないのかな』
それは勲章の百倍は少年を失望させもし憤慨させるに充分過ぎる酷い回答に違いはなく、案の定リクはたちまち艶の豊かな黒髪と眉を逆立たせた。
『仲良くで済む話なら幾らでも仲良く致しましょう―それで済まないからここに来ているのですよ』
『まあまあ、そう興奮するな―私とて彼等がやって来た事が到底許されるとは思わない―だがなあ、もう少し長い目で見てやる事は出来んかね?』
リクには分からない。
何だってこうまでして公爵が太子党を庇わないといけないのかが分からない。
否。
より正確には《分からなかった》だ。
『元帥閣下は彼等を取り締まる権限が有りながらどうして今の今まで野放し白紙委任を続けているのです!』
『うむ、それは―』
こう詰られると何時も必ず言葉を濁す公爵と言う人について、リクも他の人達も今までは全く知らなかったのだ。

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