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alone 35=紡いだ言葉=

[345]  兼古 朝知  2010-04-06投稿


「!」

水鶴は目を覚ました。
あたりを見回すと、見慣れた己の部屋。生活に最低限の物しか置いていない、質素すぎる部屋。

(夢を、見ていた…)

自分の記憶と一切違わぬ夢。泣き虫な晶、明るい晴一、笑う自分…。

あの時の晴一の言葉。

『俺も優しくなりてーんだけどよ』
『ミッチーみたいにさ』

そして先刻の晶の言葉。

『お前は優しくて…俺と笑ったりしてて…。お前…変わったよ…』


(違う)

(どれも違う)

(私は、私は…)

水鶴は、先程まで見ていた夢での自分の言葉に続く言葉を紡いだ。

「私は優しくなんかないよ、晴一にぃさん…。今も昔も…」

(外見がどう変わっても。
笑うことを
やめたとしても。
冷たい表情しか
できなくなっても。
優しくないのは
昔から変わらない…。

私が笑うのは…
私が慰めたりするのは…
優しさなんかじゃなく…)

「ただ、嫌われるのが恐かっただけだ…」

ぽつりと、静寂の中で水鶴は呟いた。
そして水鶴は起き上がり、部屋を出ようと扉に手をかけた。


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