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alone 38=存在理由=

[370]  兼古 朝知  2010-04-07投稿


「…?」

質問の意味がわからず、圭は黙った。

「私は…父上に造られた殺人鬼だ」

「……」

「ならば何故 晶の偽善的な言葉が耳に残る?」

水鶴は地に膝をついた。

「私はどこか おかしくなったのか…!?
人を殺すのに躊躇いが出る…
相手の言い分に同情する…
私は…私は…!!
このままでは…殺人鬼ではなくなってしまう…
…要らない存在になってしまう…!!」

水鶴は混乱している様子だった。不安な気持ちが脳内を占めているのであろう。額に手を当て、頭痛でもするのか、歯を食いしばっている。

「違い…ます…!!」

口調は相変わらずの途切れ途切れで、圭が言葉を紡いだ。

「水鶴様が要らない存在になるなら…ば…。
俺の存在理由も消え…ます…。
水鶴様の存在が俺の存在理由…です。
ですからどうか要らないなどと言わないで下さ…い…」

「柊…」

水鶴は顔をあげた。
圭の顔が少し悲痛そうに歪んでいたのが見えた。

――ぎゅうっ

「!?」

圭は目を丸くした。
何故なら水鶴が圭の左腕、つまり鎌のついている方の腕を掴んだからだ。

「お前を縛りつけたのは私だ…」

俯いたまま、腕を持つ手の力を込めて水鶴が言った。

「違い…ます」

圭は かぶりを振って否定した。

「鎖でつないでしまったのは私だ…」

「…いいえ」

「私は何なんだ…?」

「水鶴様は水鶴様で…す」

ポツリ、ポツリ…。

二人は消えてしまいそうなくらい小さな声で、言の葉を交わす。

「柊、ありがとう…」

「水鶴様、それは俺の言葉…です」

「これからも…隣にいてくれるか?」

「勿論…です」

口約束を交わし、二人は戦場へ進んでいった。


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