ベースボール・ラプソディ No.28
「だが、地区予選まであまり日がないこの状況で、変化球を覚えさせるのは逆効果じゃないのか?」
「こと野球に関しては、人一倍器用な男ですからね。
あいつにその気さえあれば、すぐにでも投げれるようになりますよ」
哲哉の視線の先では、八雲と小早川が力尽きてへばりこんでいた。
大澤もそこに視線をむけ、哲哉との会話を続ける。
「やはり直球だけで勝ち上がれるほど、高校野球は甘くはないか」
「それも面白いかと思ったんですけどね、さすがに成覧相手では通用しないでしょう」
「ほう、あの成覧相手に勝つ気でいるのか?」
成覧の言葉に、大澤が興味をしめした。
成覧とは、哲哉達が在席する橘華高校と同じ地区にある高校である。
監督の三宅は老齢ではあったが、野球を知り尽くした試合運びと、相手との駆け引きの妙は他の真似できるものではなく、名将と呼ぶにたりる人物であった。
さらにこの老将は、選手の育成にも非凡な才をもちあわせていた。
特にこの年の主砲とエースは、彼の長い監督人生の中で最高傑作であると自負する程の選手であり、それを証明するかのようにこの二人を擁した成覧は、先の全国選抜大会を制していた。
「ちょっと前まではそんな事、考えもしなかったんですけどね。
日に日に仕上がっていく仲間達を見ていると、何とかなるんじゃないかと思えてきちゃうんですよね」
哲哉達が甲子園へいくには、成覧は乗り越えなければならない大きな壁であった。
そのためには今年勝てずとも、何等かの攻略方を構築しておく必要があった。
「あいつも甲子園を目指すなら、変化球の一つも覚えればいいのにな」
哲哉の苦労が理解できる大澤は、そういって慰めた。
それを好意的にうけとる哲哉だったが、その反面で八雲の心情を考えると、複雑な気持ちにならざるえなかった。
「……実をいうと、八雲は甲子園を目標にしてはいないんですよ。
むしろ、自分だけが甲子園にいくことに、嫌悪感があるのかもしれません」
八雲に視線をうつす大澤。
「それが事実なら、俺達で何とかしてやらないとな」
その明確な答えも見いだせないまま、大澤はそうつぶやいていた。
「こと野球に関しては、人一倍器用な男ですからね。
あいつにその気さえあれば、すぐにでも投げれるようになりますよ」
哲哉の視線の先では、八雲と小早川が力尽きてへばりこんでいた。
大澤もそこに視線をむけ、哲哉との会話を続ける。
「やはり直球だけで勝ち上がれるほど、高校野球は甘くはないか」
「それも面白いかと思ったんですけどね、さすがに成覧相手では通用しないでしょう」
「ほう、あの成覧相手に勝つ気でいるのか?」
成覧の言葉に、大澤が興味をしめした。
成覧とは、哲哉達が在席する橘華高校と同じ地区にある高校である。
監督の三宅は老齢ではあったが、野球を知り尽くした試合運びと、相手との駆け引きの妙は他の真似できるものではなく、名将と呼ぶにたりる人物であった。
さらにこの老将は、選手の育成にも非凡な才をもちあわせていた。
特にこの年の主砲とエースは、彼の長い監督人生の中で最高傑作であると自負する程の選手であり、それを証明するかのようにこの二人を擁した成覧は、先の全国選抜大会を制していた。
「ちょっと前まではそんな事、考えもしなかったんですけどね。
日に日に仕上がっていく仲間達を見ていると、何とかなるんじゃないかと思えてきちゃうんですよね」
哲哉達が甲子園へいくには、成覧は乗り越えなければならない大きな壁であった。
そのためには今年勝てずとも、何等かの攻略方を構築しておく必要があった。
「あいつも甲子園を目指すなら、変化球の一つも覚えればいいのにな」
哲哉の苦労が理解できる大澤は、そういって慰めた。
それを好意的にうけとる哲哉だったが、その反面で八雲の心情を考えると、複雑な気持ちにならざるえなかった。
「……実をいうと、八雲は甲子園を目標にしてはいないんですよ。
むしろ、自分だけが甲子園にいくことに、嫌悪感があるのかもしれません」
八雲に視線をうつす大澤。
「それが事実なら、俺達で何とかしてやらないとな」
その明確な答えも見いだせないまま、大澤はそうつぶやいていた。
感想
- 37050: おもろいっスね。 いつも見てみるんで頑張って下さい? [2011-01-16]
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