携帯小説!(スマートフォン版)

[805]  モカ  2010-04-10投稿
小高い丘にポツリと岩がある。

何の変哲もない普通の岩。

大きさも、成人男性位で大きくない。

なのに、岩の前にはしめ繩が絞められ、神として奉られている。

参拝に訪れる人も居るし、別に変な、いわく付きでもない。

なのに、そこに住む年配者達は口を揃えて言う。

『あの岩には絶対に触るな』

理由は分からない。

けど触ってはいけないと、小さな頃から聞かされてきた者は誰一人、この教えを破る者はいなかった。

ある日、この岩の噂を聞き付け見物に来た若者がいた。

この若者は、オカルト的な物が大好きで各地を巡っているマニアだった。

例の如く、その村に着くと年配者に岩には触るなと注意を受けた。

触る気は無い。若者はその岩がどんな物か見たかっただけだった。

穏やかな丘を登りきると、その岩はあった。

噂を聞き期待に胸を膨らませていた若者だったが、余りの変哲のなさに気がぬけた。

何時間もかけて来たというのに、これじゃあ時間の無駄じゃないか。

若者はトボトボと岩へ近寄った。

本当に何の変哲も…

若者は近寄ったと同時に違和感を覚えた。

そして、周りに人が居ない事を確認すると岩に触れた。

小さく岩に開いた穴。小さく入ったひび割れ。

若者が少し力を入れると、パラパラと岩が崩れ落ちた。

若者は唖然とした。

「これは…じゃあこの村の人達は…」

『触れてはいけないと言ったのに』

低い声に若者が驚くと、そこには険しい顔をした老婆が立っていた。

若者は言い知れぬ恐怖に怯えた。


それから若者がどうなったのかは分からない。

しかし、丘の上には何故か岩が一つ増え、二つ奉られているそうだ。

終わり

感想

  • 37158: とても興味深く面白いです♪ 己景&羝斗 [2011-01-16]

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