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僕とご主人様の物語10

[413]  矢口 沙緒  2010-04-11投稿



「母さん、ただいま」
「あら、早かったじゃない。
ご飯、出来てるわよ」
「うん、あとで食べる。
それより、僕の部屋そのままになってる?」
「誰も入らないわよ」
「よかった」
そう言うと彼は階段を駆け上がり、5年ぶりの自分の部屋に飛び込んだ。
机の一番下の引き出しを、ガサガサと掻き回す。
「あったー!」
彼は原稿用紙の束を机の上に置いた。
それは彼が高校生の時に書いた小説だった。
題名は
『夏の恋人達』
主人公は加島勇一と西野桃香。
季節は夏。
この辺一帯を舞台として、雨の日のバス停のベンチで出会った二人が、喧嘩をしながらも引かれ合い、最後に彼は彼女にプロポーズするために、貝殻の指輪を握りしめ、彼女の待つ『ポエムっち』に向かう。
しかし、この小説は未完だった。
最後の結末を書かないまま、彼はこの小説を机の引き出しに入れ、大学に行ってしまった。
そして、5年の都会生活の間に、すっかり忘れていたのだった。
だから半袖だったのか。
だから僕しか二人の運命を決められないのか。
彼は残っていた原稿用紙を取り出すと、続きを書き始めた。



…そして彼は、ハッピーエンドの結末を書きましたとさ。
めでたし、めでたし。
さぁ、もう遅いから寝ましょうね」
そうですね、ご主人様。でも、彼が思い出してくれたお陰で、二人が幸せになれてよかったです。
また明日も、素敵なお話をしてくださいね。
では、おやすみなさい、ご主人様。

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