航宙機動部隊第四章・10
所狭しと張り巡らされたそれは網であった。
帝国艦隊の亜光速実弾は束となり霰となりその中に突き刺さる。
何百もの磁性体の群れが防御管制を食い破ろうともがいては暴れ回った。
だが電磁膜に阻まれ磁力干渉帯に進路を反らされ、僅かに目標を捉えた数弾も集団から放水を浴びせられとどめを刺される。
『我が方に損害なし―全弾回避、回避です!』
上気したオペレーターがそう知らせると、合衆国旗艦《グロズヌイ》艦橋は歓声に沸き立った。
だが、
『敵さらに接近』
したたか僚艦を失った筈の統合宇宙軍側に怯む様子も退く気配もいまだ無かった。
連合艦隊は再び亜光速実弾を放った。
敵もようやく管制を働かせたのか、今度の砲撃は少なからずの妨害に合い、前回みたいな鮮やかな当たりっぷりこそ見せなかったが、それでも相手の艦列のあちこちが火を吹いた。
『敵との距離三六宙米(三六修正光秒)』
『噴進魚雷斉射。全艦収束プラズマ砲稼働用意!弾幕を張るぞ』
戦況解析盤を軽く叩いてバクーシン少将が号令を放つ。
数千本のミサイルがその噴射煙で虚空を白灰色に染め上げた。
その名の通りこれはただの宇宙魚雷だ。
敵のハッキングを避ける為誘導システム始め一切の《考える》機能は積まれていないシンプルな代物だった。
統合宇宙軍も同じ手段で反撃し―両者の中間宙域はぶつかり合う魚雷同士が光球を派手に炸裂させ、まばゆく踊るカーテンを幾つも織り上げる。
お互いひとしきり投げ槍を撃ち尽くすと、いよいよ接近砲戦の火蓋が切られた。
青・赤・緑・様々な色の光の糸が群れをなして漆黒の闇を乱舞し、目測距離に達したそれぞれの艦列に踊り込み、灼熱の刀刃と化してその身に穴を開け切り刻もうとする。
この時点に置いても合衆国軍は優勢だった。
攻撃・防御の集団管制が上手く利いて、帝国側の組織力に打撃を与え、指揮系統を圧迫し、その統率に痛打を喰らわせ続ける。
やがて統合宇宙軍の陣形に綻びが目立ち始めた。
その隙を逃すまいとバクーシン少将は切り札の投入を指示する。
『戦闘艇・攻撃艇は直ちに発艦を開始せよ。繰り返す。戦闘艇・攻撃艇発艦始め!』
充分な管制砲火が出来ない敵にとって、それは最大の脅威だった。
合衆国宙母群から飛び立ったのは戦爆連合一八00機。
銀色に輝く雲を成して帝国の艦列に襲いかかる!
帝国艦隊の亜光速実弾は束となり霰となりその中に突き刺さる。
何百もの磁性体の群れが防御管制を食い破ろうともがいては暴れ回った。
だが電磁膜に阻まれ磁力干渉帯に進路を反らされ、僅かに目標を捉えた数弾も集団から放水を浴びせられとどめを刺される。
『我が方に損害なし―全弾回避、回避です!』
上気したオペレーターがそう知らせると、合衆国旗艦《グロズヌイ》艦橋は歓声に沸き立った。
だが、
『敵さらに接近』
したたか僚艦を失った筈の統合宇宙軍側に怯む様子も退く気配もいまだ無かった。
連合艦隊は再び亜光速実弾を放った。
敵もようやく管制を働かせたのか、今度の砲撃は少なからずの妨害に合い、前回みたいな鮮やかな当たりっぷりこそ見せなかったが、それでも相手の艦列のあちこちが火を吹いた。
『敵との距離三六宙米(三六修正光秒)』
『噴進魚雷斉射。全艦収束プラズマ砲稼働用意!弾幕を張るぞ』
戦況解析盤を軽く叩いてバクーシン少将が号令を放つ。
数千本のミサイルがその噴射煙で虚空を白灰色に染め上げた。
その名の通りこれはただの宇宙魚雷だ。
敵のハッキングを避ける為誘導システム始め一切の《考える》機能は積まれていないシンプルな代物だった。
統合宇宙軍も同じ手段で反撃し―両者の中間宙域はぶつかり合う魚雷同士が光球を派手に炸裂させ、まばゆく踊るカーテンを幾つも織り上げる。
お互いひとしきり投げ槍を撃ち尽くすと、いよいよ接近砲戦の火蓋が切られた。
青・赤・緑・様々な色の光の糸が群れをなして漆黒の闇を乱舞し、目測距離に達したそれぞれの艦列に踊り込み、灼熱の刀刃と化してその身に穴を開け切り刻もうとする。
この時点に置いても合衆国軍は優勢だった。
攻撃・防御の集団管制が上手く利いて、帝国側の組織力に打撃を与え、指揮系統を圧迫し、その統率に痛打を喰らわせ続ける。
やがて統合宇宙軍の陣形に綻びが目立ち始めた。
その隙を逃すまいとバクーシン少将は切り札の投入を指示する。
『戦闘艇・攻撃艇は直ちに発艦を開始せよ。繰り返す。戦闘艇・攻撃艇発艦始め!』
充分な管制砲火が出来ない敵にとって、それは最大の脅威だった。
合衆国宙母群から飛び立ったのは戦爆連合一八00機。
銀色に輝く雲を成して帝国の艦列に襲いかかる!
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