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流狼−時の彷徨い人−No.48

[410]  水無月密  2010-04-14投稿
「随分と深い竪穴ですね、この底がシャンバラに繋がっているのですか?」
 直径が五間(約9.1M)程もある竪穴を覗き込む半次郎。
 底は暗く、どれだけの深さがあるか見当もつかない。

「簡単には辿り着けぬだろうが、繋がっているのは確かだ」
 そうこたえると、ノアは周囲の地質を確認し始めた。

「厄介だな、二カ所同時に切り崩さなければ、これは塞げないな。
 僅かにでも剣を入れるのがずれれば綺麗には塞げぬが、手を貸してくれるか?」
「承知しました」
 半次郎の返事に小さくうなずくと、ノアは切り崩す地点へと移動した。
 それに合わせて、半次郎も移動を始める。

 指示をうけずに正確な切り崩し地点へと移動した半次郎に、ノアは口元を緩めていた。
「気を発動させて、ワタシの気に同調させろ。
 そうすれば、ワタシが切り込む瞬間が判るはずだ」
「やってみます」
 静かに気を発動させる半次郎。
 その気は瞬く間に空間を支配し、ノアの気と同調した。


 この地へ移動の途上、ノアは気についていくつかの講釈をおこなっていた。
 本来、気というものは形而上的なものであるために、その理論はどうしても難解なものになってしまう。
 にも関わらず、半次郎はその全てを理解し、己のものにしていた。


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