航宙機動部隊第四章・12
同日午後二三時・パパレオス星系・最外縁征討軍旗艦《D=カーネギー》―\r
アリ=アリアンス宙沖に置ける緒戦の勝利は、大小三桁に及ぶ祝賀会の舞台へとそこを化していた。
その乱痴気騒ぎのただ中へ、一人の女が入って行こうとしていた。
今まで乗って来た小型高速船から気密連結橋を伝ってこの巨大豪華客船へと足を進めた彼女は、たちまちその顔面に嫌悪の表情を浮かべる。
急な来客とて出迎えが無かった事にではない。
(たった一戦の勝利でまるで帝国を滅ぼしたかの様な雀躍振り―全くこの体たらくと来たら)
そうだ。
彼女の憤慨・懸念の対象はより深刻かつ本質的な物であった。
そんな彼女に作業に当たるクルーや乗降中の要人達が遠巻きに奇異の眼差しを向けて来る。
これにはいささか彼女にも責任が在ったかも知れない。
その服装にしてからが、時代にして優に四0星紀は逆行した代物であった。
誰だって不思議に思うだろう。
時代の最先端を行く筈のスパイラル=スペース耐用恒星間宇宙船のただ中に古地球時代東洋の装束―と言うより完全な巫女姿の女性が現れたとあっては。
その巫女の出で立ちに、彼女は漆黒に金で縁取りされた天然絹製のある意味派手な長衣(としか言い様の無いもの)を羽織る。
腰にまで届く揃えられた頭髪も実に大時代的だ。
首からは金糸で緑色の宝石らしき物をぶら下げていた。
顔付きは中々に非凡であった。
やや切れ長の目に高い鼻―\r
皮膚は白味がかった艶のある肌色をしていた。
年の頃は二0代半ばであろうか、全身から漂う流麗さと気品―外面だけなく中身も才色兼備の美女と評して良かった。
彼女の名前は安史那晶子(あしなしょうし)。
宗教界から遣わされた特使であった。
(それにしてもどこから手を付ければいいのかしら)
晶子はその美貌に憂色を浮かべる。
特使に任命される位だから彼女は非常に有能だ。
有能所か大した辣腕家ですらある。
そしてパレオス星邦を巡る情勢はその辣腕家をして舌を巻かせて余りある混迷振りであるのも動かし難い事実なのであった。
船内通路を相変わらず珍しい物でも見るかの様な幾つもの視線を浴びながら、彼女は悠然と歩く。
彼女の任務は第一にこの宙域に置ける革新勢力の動静を探る事。
次にもしその存在が明らかとなった場合はあらゆる手段を使って叩き潰す事にあった。
アリ=アリアンス宙沖に置ける緒戦の勝利は、大小三桁に及ぶ祝賀会の舞台へとそこを化していた。
その乱痴気騒ぎのただ中へ、一人の女が入って行こうとしていた。
今まで乗って来た小型高速船から気密連結橋を伝ってこの巨大豪華客船へと足を進めた彼女は、たちまちその顔面に嫌悪の表情を浮かべる。
急な来客とて出迎えが無かった事にではない。
(たった一戦の勝利でまるで帝国を滅ぼしたかの様な雀躍振り―全くこの体たらくと来たら)
そうだ。
彼女の憤慨・懸念の対象はより深刻かつ本質的な物であった。
そんな彼女に作業に当たるクルーや乗降中の要人達が遠巻きに奇異の眼差しを向けて来る。
これにはいささか彼女にも責任が在ったかも知れない。
その服装にしてからが、時代にして優に四0星紀は逆行した代物であった。
誰だって不思議に思うだろう。
時代の最先端を行く筈のスパイラル=スペース耐用恒星間宇宙船のただ中に古地球時代東洋の装束―と言うより完全な巫女姿の女性が現れたとあっては。
その巫女の出で立ちに、彼女は漆黒に金で縁取りされた天然絹製のある意味派手な長衣(としか言い様の無いもの)を羽織る。
腰にまで届く揃えられた頭髪も実に大時代的だ。
首からは金糸で緑色の宝石らしき物をぶら下げていた。
顔付きは中々に非凡であった。
やや切れ長の目に高い鼻―\r
皮膚は白味がかった艶のある肌色をしていた。
年の頃は二0代半ばであろうか、全身から漂う流麗さと気品―外面だけなく中身も才色兼備の美女と評して良かった。
彼女の名前は安史那晶子(あしなしょうし)。
宗教界から遣わされた特使であった。
(それにしてもどこから手を付ければいいのかしら)
晶子はその美貌に憂色を浮かべる。
特使に任命される位だから彼女は非常に有能だ。
有能所か大した辣腕家ですらある。
そしてパレオス星邦を巡る情勢はその辣腕家をして舌を巻かせて余りある混迷振りであるのも動かし難い事実なのであった。
船内通路を相変わらず珍しい物でも見るかの様な幾つもの視線を浴びながら、彼女は悠然と歩く。
彼女の任務は第一にこの宙域に置ける革新勢力の動静を探る事。
次にもしその存在が明らかとなった場合はあらゆる手段を使って叩き潰す事にあった。
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