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子どもは家を選べない〜番外編〜

[1211]  まりこ  2010-04-16投稿
その日、「彼」は、樹を見上げていた。
そこは、いつも、空が低く感じられた。
苦手な虫。
寒い季節には、決まって、それが『いる』
でも、なぜか『きれい』な樹。何も言わないのが『いい』。

わけもなく、ただ、虫が嫌いだ。
『在る』こと自体が耐えられないのに、カラカッてくる『やつら』がいる 。

なぜだ?
放っておいてくれたらイイノニ。

だったら、まだ、虫の方がマシだ。

虫が、一度、大きく払われたことがあった…

女の子が『来た』。

走って来た。

マッシロの、ひらひらした服を着ていた。
回りの、誰もが着ない、ひらひらした、 大きなリボンの着いた服を、風になびかせて走って来た。

頭にも、リボンが着いていた…。

変な子…。

虫が、バーっと散った。

助かった。

「だいじょうぶ?○○ちゃん?」って言った。

怖くなかった。

その子の方が、怖そうな顔をしていた。

すぐに、大人が、その子を連れていった。
あの子も、ゼッタイ、虫が苦手なんだろう。

泣いても、誰も助けに来ないって聞いたけど、あのまま、ここにいたら、いつも、助けに来そう…。

ぼくの名前、知ってた。
なんていうのかな…?

寒い日のひととき、「彼 」は、
一瞬、過ぎた瞬間を思い返していた。

やがて、すっかり、記憶から薄れた断片の残っていた頃の話である。

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