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航宙機動部隊第四章・19

[478]  まっかつ改  2010-04-25投稿
『所で話は変わるのだが―』
ペアリーノ=グィッチャルディーニは声と表情にやや影を差し込ませて、
『ピエトロ=ガルバーナ君の件だが、何か分かった事は有りますかな?』
それは今や星邦議長最大の政敵にまで急成長した革新派のリーダーの名前だった。
司法省長官パンネラ=ディアーナは、自分のパネルカードを議長の黒執務卓の縁にある差し込み口に挿入しながら、
『彼が複数の業界・団体・組織・要人をバックに持っているのは確実です』
目の前に写し出された大小二桁近くの2Dホロ画像が、グィッチャルディーニの相貌に更なる陰影を刻み込む。
ふと議長はとある画像に目を止めた。
それは彼のライバルを取り巻く組織体の相関図の一つであった。
『これは何ですかな?』
グィッチャルディーニが指差した先っぽが僅かに光の壁を突き抜ける。
『主に宗教・カルト・思想団体を取り扱った物ですが』
司法長官の答えは至って正確だったのにグィッチャルディーニは首をかしげて見せた。
『いや、これではまるで―彼の信条とは正反対な気がしましてな』
社会革新同盟党首ピエトロ=ガルバーナと言う少壮の政治家の主張と言えば、主に四百年に及んだこの星の歴史で産み出された様々な格差・不平等・社会階層の分化を解消し、貧困を根絶し、世襲化した官僚による政府支配にピリオドをうたせる事にその眼目があった筈だ。
早い話がパレオス全体をガラガラポンしてしまえ、それも一挙に―だからこそ彼は一部の星民から絶大な人気を得、大多数の既得権益保持者から警戒もされ恐れられてもいるのだが、今この場に示されている電子情報の中身を見れば―\r
『革新―同じ革新でも、これは全銀河文明レベル方面の代物ですな』
首相代行の謎めいた言葉に、司法長官とジョゼッペ=ヴェリーニの二人は目を見合わせた。
議長は一体何を語ろうとしているのか?
『君達はこの星を出たことが無いから分からぬのも無理はない―この場合の革新とは現行の文明以外の生き方・在り方を目指す―大雑把に言ってそんな所ですな』
音もなくヴェリーニ首席政務官は執務卓に屈み込む様に両手を置いて、
『閣下、まさかピエトロ=ガルバーナが中央域文明圏に反旗を翻す存在だとでも?』
すると議長は悪戯っぽくウインクして見せた。
『これは、私が思っていたよりも遥かな大物らしいですな』

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