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航宙機動部隊第四章・22

[527]  まっかつ改  2010-04-27投稿
『彼女は私の専属です』
総領事と呼ばれた少年はやや長めの豊かな黒髪の持ち主であった。
憲兵達は慌てて敬礼し、取り敢えずジョウァンナ=バウセメロから手を放した。
『彼女の事は私が責任を負います―何とぞ良しなに』
少年はそう言い添えた。
彼は確かに正真正銘の外交官であるらしく、憲兵は逆らう所か今度はジョウァンナにまで謝罪交えた丁重な物腰へと態度を一変させて来た。
ここまで変わる物か―敏腕女性記者は心底呆れた。

『あの、お礼を言わせてもらいます』
大使館村への入場を果たしたジョウァンナ=バウセメロは、目の前を先導する様に歩く総領事を追いながら感謝を伝えた。
それにしても不思議な少年だ。
体格はやや小柄、古地球時代の遊牧民族みたいな機能性満点の青い衣装を着こなし、あどけなさと精悍さが同居する名状し難い雰囲気を辺りに放っていた。
髪と同色の大きな瞳には年相応の純粋さに満ちた涼やかな光を宿している。
相貌は美男と言って良かった。
もう少し《使い方》を心得れば、それは幾人もの異性を陥落させる強力な攻城兵器と化するだろう。
『お礼には及びません―所で、この村に用があるとかないとか』
声をかけられざま少年は足を止め、振り向いてそう答えた。
正面から見ると、首から黒翡翠のペンダントをぶら下げている。
『ええ、私は太子党の真実を取材したいと思っているのです』
ジョウァンナは目的を伝えた。
成就の為ならば辞表を叩き付けても構わない、それは命懸けの目的であった。
少年は少しだけ眉をしかめて見せた。
『太子党と事を構えるおつもりで?』
もう構えています、との即答に、総領事は目をぱちくりさせ、
『そいつは大変ですな―命が幾つあっても足りやしない』
そう冗談めかしてくわばらくわばらと足を速めて立ち去ろうとしたが、
『待って』
女性記者は中々の俊足を示してすぐに追い付いた。
『取材するにも宿が要るの!協力者が要るの!情報が要るの!資金―も要るの』
足に劣らぬ早口でそうまくし立てた。
話を聞きながら少年は早歩きを続けたが、一五分後とある建物の前に着きそこで足を止めた。
白色の漆喰製の塀がかなり向こうまで続く、和式の古風な邸宅らしかった。
そこの厳かな両開き門の前は、またしても完全武装の憲兵達によって守られていたが、少年は気軽に彼等に挨拶をする。

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