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航宙機動部隊第四章・25

[512]  まっかつ改  2010-05-01投稿
『戦務手当てに超過危険手当てに特殊ボーナスに、仮にくたばっても家族が一生食っていくに困らない保険が転がり込んでくる―ここの食いつめた奴等に取っては正に願ったり叶ったりな条件な訳だ』
ロバート=ハートフォード大将はそう言って、グラスに残るウィスキー水割りを一気に飲み干した。
そして相変わらず女性の方を見ないまま空のグラスを差し向ける。
『ですが、先の戦いでは確かに帝国艦隊を撃破しましたよ』
女性はそれを気にする素振りを見せないで、次の水割りを作りながら、
『それだけ実力があるって事じゃないですか?統合宇宙軍よりも』
大将は今度はやや薄めに入れられたグラスを貰いながら、しばらく巌の様に黙り込んでいたが、
『本来なら勝つ必要は無かった』
意外な言葉を口にした。
そこへ、二人の酔っ払った士官が、大将達の前を通り過ぎざまに丸テーブルに軽く接触して行った。
テーブル上のボトル等は無事だったが、軽く水滴を跳ねらせながら乾いた微細な音を立ててくるくると回る。
大将は二人の後姿に意外にも心配そうな目線を向けながら、
『パレオス星系を守り通すのが我々の目的だろ?事実その為の要塞化が今この瞬間にも進んでいる』
そしてもしそれが完了したら、帝国軍は同星系を攻め落とせなくなる筈なのだ。
つまり、わざわざ敵を求めて艦隊を動かす等、元々の作戦には無い行動なのだ。
『それを太子党が潰し、無能な上層は放置したまま、挙げ句の果てにはこちらに尻拭いを要請して来た―アリ=アリアンスの勝利とはそうやって得られた代物なんだよ』
大将のグラスを握る手に力が込められる。
『だとしても敵よりもこちらが強いことが証明された戦いでもあったのではないですか?』
女性は納得しかねる様子だった。
大将は鼻腔を膨らまして大きく息を吐いて、
『そうだよ。だからこそ困ってるんだ』
軽く額に手をやった。
『お陰で好戦気分ってのが蔓延し出してな―要するに今までの要塞化何ていらん、俺達だけで帝国をやっつけてやるって奴等が大半を占めちまった』
『ほう』
女性は適当に相槌を打った。
『それ所か今すぐにでも全軍を挙げて統合宇宙軍領へ侵攻せよとな―なまじ勝ちの味を覚えた分、以前よりもタチが悪くなっちまった。統制の取れない軍隊程、危険な代物は無いからな』

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