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航宙機動部隊第四章・26

[656]  まっかつ改  2010-05-02投稿
『それは大変ですねえ』
責任感も緊迫感も十分に共有したとは思えない女性の返事に、急角度に目を剥いたロバート=ハートフォード大将は、水割りを三分の二程残したグラスを丸テーブルに置き、
『何だその言い方は?貴様だって戦う―』
そこで始めて気付いたのだ。
相手の服装は、彼の部下が着ている筈の明褐色に所々焦げ茶を廃した軍服等からおよそ程遠い代物だった。
『や、少佐―いや分かったぞ。貴様はジュルチェン《航宙狩猟民族》か』
うっすらとした驚愕を表情に浮かべながら、大将が下した推測は八0点以上正答と言った所だった。
女性の着る強化絹製の鮮やかな青い胡服には、これもきらきらと光る白銀の腰帯がややきつ目に巻かれている。
彼女達はこの衣装を旗袍―軍事貴族の着る服、と呼んでいた。
やや長身のすらりとした体型に纏われたそれは、腰や胸のラインを露骨で無い程度に強調しながら、本来なら併せがたい優雅さと機能美とを余す所なく付与している。
まだあどけない顔付きは、しかし五年後十年後立派な美女になる顕在的潜在的資質を十二分に内包してもいた。
髪型は艶の豊かな漆黒のセミロング―\r
衣装の袖口や首もと等、縁に当たる部分には腰帯と同じ白銀色が配されて、それは彼女が官職保有者である事を表している。
『失礼とは思いつつ、情報収集に当たらせて貰いましたわ』
テンペ=ホイフェ=クダグニンは、悪びれる様子も無く丸テーブルを挟んでロバート=ハートフォードの向かいの椅子に座った。
『おいお前、軍人になった姉貴とかいなかったか?』
大将は暫く神妙な面持ちで彼女の容姿を観察してから、ふとそんな事を口にした。
いません、との少女の答えにそうか、とだけ言って大将は何故か少し残念そうな顔をした。
それにしても、とロバート=ハートフォードは思う。
うちの副官に実にそっくりだ、瓜二つも良い所じゃあないか、と。
例え外交官でも自由に出入り出来ない筈のこのバーに、彼女がたやすく侵入を果たせた理由も即座に分かると言う物だ。
恐らくは顔パスで、ろくにチェックも受けなかったのだろう―\r
大将は無煙々草をポケットから取り出しながら、
『で、共和国宙邦の副領事殿は外に聞く事とかはあるのかな』
有りません、との即答に、大将は黙ったままパネルカードで無煙々草に火を着けて、口にくわえた。

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