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スカーレットと青?

[388]  ブランキー  2010-05-03投稿
オットーがアパートに帰ると、アヒムは既にキッチンテーブルの前に座っていた。

二人が住むアパートは、街の西に流れるヴェーザー川のほとりの街側に位置している。

二人は共に十四歳であったが、学校に通う金はなく、年齢的にも働き先すらもらえなかった。

そんな二人は盗みで生計を立てるしかなく、アパートの家賃や生活費をやりくりするので精一杯であった。

「今日は盗らないのか。」オットーが低い声でアヒムに問う。

「ああ」
アヒムはテーブルに両肘を置き、疲れ切った表情で俯いている。

「やばいぜそろそろ。十マルクしか残ってない。」

「…ジンクスだよ、ジンクスが問題なんだ。」
アヒムが小さな声でそう呟いた。

「ジンクス?それがどうしたんだ?」
オットーは訝しげにアヒムを見た。

「あのメロディを聴くと、俺はどうもダメだ。手が動かない。」

「でもあそこが一番盗み易いポイントなんだ。観光客は全員“結婚式の家の笛吹男”に夢中なんだよ。」

「それはわかってる…わかってるんだ…」
アヒムは声を殺して言った。

「お前この街に来てからおかしいぞ。あんな童話信じてるのか?」

「…そんなんじゃない。」

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