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航宙機動部隊第四章・34

[624]  まっかつ改  2010-05-10投稿
K=シャフラン少将からひとまず開放されたリク=ウル=カルンダハラは、自邸の離れにてとある重要人物と会合していた。
偏在型照光システムが夕暮れを告げ、おそらくは晩秋を意識したオレンジ色が庭から建物から部屋の内部まで鮮やかに染め上げる。
その決して長くはない人工の芸術は、離れにて立つ主人と客人との影を何処までも引っ張ろうと試み―やがてそれ自体が夜の暗がりに次第に飲み込まれて行く。
リク=ウル=カルンダハラがパネルカードを操作するまでもなく、総面照光が離れの中を満遍なく明るくしてくれた。
エグムント=ファルフナー星間司憲局地捜査官、これが総領事に招待された男の名前と肩書だった。
年は二十代半ばであろうか―スマートで理知的でいかにも敏腕そうな外貌をしている。
そしてこれ程までにスーツ姿の似合う人物を見たのは、リクは初めてだった。
だが、捜査官は畳の上に立ったまま、
『さて、そろそろ窮屈になって来たからね、失礼するよ』
妙な断りを入れてきた。
そして―リクの目の前で見る見る彼の姿は溶ける様に膨らんだ!
それは僅か四、五秒の間の出来事であった。
唖然とする若き総領事の前で、彼はとんでもない変身を遂げていた。
そこには、以前とは似ても似つかぬお腹を中心に全体的にやや弛緩した体型の中年の男がいた。
しかも、その頭は五割方禿げ上がり、残された部分はもじゃもじゃと悪あがきにも似た自己主張を試みている。
しかし、エグムント捜査官は腹も髪も気にしてない様子で、
『これでようやく挨拶が出来る―初めまして』
そう言いざま、どっかと畳に腰を下ろし、あぐらをかいて見せた、
『ぐま゛っ―は、初めまして』
思わず鼻白みながらも、リクも相手に倣いゆっくりと畳に座る。
エグムントは早々と浮遊灯でイルミネーションされ初めた和式庭園を物珍しそうに眺めながら、
『私は特殊な薬を飲んでいてね、一定の時間内ならあの姿をキープ出来る』
職業柄正体を明かせない場合も多いからね、と言う説明に一応リクは納得はしたが、それでも驚愕の余韻は簡単には消せないみたいだ。
それでも少年は膝を乗り出して、
『太子党関連の調査はどこまで進みましたか?』
『外堀は埋めたと断言出来るね』
エグムント=ファルフナーは自信満々だった。
『勿論フーバー=エンジェルミを含めてだ』

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