航宙機動部隊第四章・36
『それにしても』
エグムント=ファルフナー星間司憲局地捜査官は邪気の無い様子で、
『どうして君はフーバー=エンジェルミをそうまでして憎むんだい?』
尋ねられたリク=ウル=カルンダハラ最外縁総領事の胸にぶら下げられた黒い宝石が、一瞬きらりと艶を光らせた。
『まあ、かつての自分なら放って置いたのかも知れません』
そう言って少年も縁側下に控えるサーバントマシーンの保温盆に手を伸ばし、お茶を口にして、
『大して目的も無くこの道を志しましたから』
彼は未熟であっても不完全であっても嘘つきではなかった。
『まさか自分が太子党と対決する何て夢にも思わなかった』
そのリクがだ。
今や反太子党の中心人物になりそうな勢いなのだ。
『自分はどちらかと言えば自分さえ良ければ良いとね―宙際政界でもそれ以上のスタンス何か考えた試しが無かったのですが』
聞きながらエグムントは興味深気な目を少年に向け始めた。
『本当、自分がここまでやるとは正直想像だに出来ませんでしたよ』
リクは半ば慨嘆気味半ば自嘲気味にそう語った。
今や彼の元にはエグムントを筆頭に、パレオス中央通信社の女性記者から連合艦隊司令長官まで、多彩な人材が集まり、合衆国陣営内でも隠然たる勢力を―勢力と呼んで良いのなら―形成し出しているのだ。
その手腕と行動力は恐るべしとしか言い様が無い。
だが、当の本人は今だに自分と言うものを掴み切れていないのも消しがたい事実であった。
第一、この能力ないし才覚が吉と出るのか凶と出るのかすら分からない。
自信を持つべきなのか負い目を感じるべきなのかも分からない―\r
そんな彼を、マエリーと言う一人の少女がほんの少しだけ変えたのだ。
道の真ん中で行き先を躊躇う彼の背中を軽く片手でぽんと押したかの様に―\r
『最初は単純な復讐のつもりだったんですがね―今となっては何としてもやり遂げねばならぬ、そんな気持ちになっています』
リクはそう断言した。
『君は中々面白い事を言う』
お茶を飲み終えたエグムントはやおら立ち上がり、
『実は私も君みたいな物でね―この最外縁自体には何の興味も無かった。太子党にもね―だがいつまでも退屈をかこつつもりはもう無くなったよ。乗りかかった船だ。私も君に協力させてもらうよ』
そして後ろ手を振りながらその場を出ていった。
エグムント=ファルフナー星間司憲局地捜査官は邪気の無い様子で、
『どうして君はフーバー=エンジェルミをそうまでして憎むんだい?』
尋ねられたリク=ウル=カルンダハラ最外縁総領事の胸にぶら下げられた黒い宝石が、一瞬きらりと艶を光らせた。
『まあ、かつての自分なら放って置いたのかも知れません』
そう言って少年も縁側下に控えるサーバントマシーンの保温盆に手を伸ばし、お茶を口にして、
『大して目的も無くこの道を志しましたから』
彼は未熟であっても不完全であっても嘘つきではなかった。
『まさか自分が太子党と対決する何て夢にも思わなかった』
そのリクがだ。
今や反太子党の中心人物になりそうな勢いなのだ。
『自分はどちらかと言えば自分さえ良ければ良いとね―宙際政界でもそれ以上のスタンス何か考えた試しが無かったのですが』
聞きながらエグムントは興味深気な目を少年に向け始めた。
『本当、自分がここまでやるとは正直想像だに出来ませんでしたよ』
リクは半ば慨嘆気味半ば自嘲気味にそう語った。
今や彼の元にはエグムントを筆頭に、パレオス中央通信社の女性記者から連合艦隊司令長官まで、多彩な人材が集まり、合衆国陣営内でも隠然たる勢力を―勢力と呼んで良いのなら―形成し出しているのだ。
その手腕と行動力は恐るべしとしか言い様が無い。
だが、当の本人は今だに自分と言うものを掴み切れていないのも消しがたい事実であった。
第一、この能力ないし才覚が吉と出るのか凶と出るのかすら分からない。
自信を持つべきなのか負い目を感じるべきなのかも分からない―\r
そんな彼を、マエリーと言う一人の少女がほんの少しだけ変えたのだ。
道の真ん中で行き先を躊躇う彼の背中を軽く片手でぽんと押したかの様に―\r
『最初は単純な復讐のつもりだったんですがね―今となっては何としてもやり遂げねばならぬ、そんな気持ちになっています』
リクはそう断言した。
『君は中々面白い事を言う』
お茶を飲み終えたエグムントはやおら立ち上がり、
『実は私も君みたいな物でね―この最外縁自体には何の興味も無かった。太子党にもね―だがいつまでも退屈をかこつつもりはもう無くなったよ。乗りかかった船だ。私も君に協力させてもらうよ』
そして後ろ手を振りながらその場を出ていった。
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