航宙機動部隊第四章・39
同じ頃、テンペ=ホイフェ=クダグニン副領事は合衆国陣営貴顕との十何度目かの会合を終え、リクの待つであろう自邸へ帰るべく、二人の護衛に伴われて船内自走歩道に足を乗せていた。
会合自体は単調な決戦論の付和雷同に終始し、既に異議も対案も出せる雰囲気ではなく、ある意味不毛と言えば不毛ではあったが、ネカイア公爵クラッタ名誉元帥がやたらこちらに感謝の目差しを向けつつ、太子党のやり過ぎに恐らくは始めて苦言を呈したのが印象に残っていた。
その印象を噛みしめつつ、彼女は五分弱の道程を経て大使館村方面へと通じる立体帯磁軌道発着場へと出た。
そしてそこで黒いスーツを来た一団の男女に出くわしたのだ!
『君がテンペ=ホイフェ=クダグニンか』
彼等のリーダーらしき一人の男の放つ平淡な誰何の声は、しかし副領事の心胆を寒からしめるのに十分な迫力を持っていた。
テンペは連中の出自におおよその見当を付けるのに、さして時間を要さなかった。
一度リクから聞いた事がある―こいつらが武装興信か、と。
正体が分かればその雇い主が何者なのかも探るのに苦労は無かった。
ましてや、
『君達は余程アラヒトカミ様に気に入られたみたいだね』
問われるまでもなく、男はそれを自ら明かして来た。
そして彼は胸に手を当てて、
『特にフーバー=エンジェルミ公子は君に興味があるらしい―殺さずに連れてくる様にと厳命されている』
男の黒い目が無機質だが怪しい光を湛えた。
『大人しく我々に協力してくれると助かるのだがね』
相手は七人、こちらは私服憲兵二人が付いているとは言え、テンペ自身に戦闘経験も訓練経験もある筈がない。
顔面蒼白になりながら押し黙ってしまった彼女に、
『伏せて下さい、副領事!』
後から私服憲兵達の声が投げ掛けられた。
その言葉にびくりと反応を取り戻してすかさず床面に両手を着けた彼女の頭上で銃撃戦が展開され―\r
やがて空気を引き裂く咆哮が止むのを確認したテンペは恐る恐る首だけを背後に向けた。
そこには二人の男が仰向けに倒れ、全身に空いた穴から血と湯気と焦げた臭いを出していた。
思わず目をそむけた彼女に、
『これで君を守る者もいなくなったし、もうそろそろいいかな?我々も余り手荒な真似はしたくないんでね』
リーダー格の男が目配せすると、彼の部下の一人が彼女の腕を掴み上げた。
会合自体は単調な決戦論の付和雷同に終始し、既に異議も対案も出せる雰囲気ではなく、ある意味不毛と言えば不毛ではあったが、ネカイア公爵クラッタ名誉元帥がやたらこちらに感謝の目差しを向けつつ、太子党のやり過ぎに恐らくは始めて苦言を呈したのが印象に残っていた。
その印象を噛みしめつつ、彼女は五分弱の道程を経て大使館村方面へと通じる立体帯磁軌道発着場へと出た。
そしてそこで黒いスーツを来た一団の男女に出くわしたのだ!
『君がテンペ=ホイフェ=クダグニンか』
彼等のリーダーらしき一人の男の放つ平淡な誰何の声は、しかし副領事の心胆を寒からしめるのに十分な迫力を持っていた。
テンペは連中の出自におおよその見当を付けるのに、さして時間を要さなかった。
一度リクから聞いた事がある―こいつらが武装興信か、と。
正体が分かればその雇い主が何者なのかも探るのに苦労は無かった。
ましてや、
『君達は余程アラヒトカミ様に気に入られたみたいだね』
問われるまでもなく、男はそれを自ら明かして来た。
そして彼は胸に手を当てて、
『特にフーバー=エンジェルミ公子は君に興味があるらしい―殺さずに連れてくる様にと厳命されている』
男の黒い目が無機質だが怪しい光を湛えた。
『大人しく我々に協力してくれると助かるのだがね』
相手は七人、こちらは私服憲兵二人が付いているとは言え、テンペ自身に戦闘経験も訓練経験もある筈がない。
顔面蒼白になりながら押し黙ってしまった彼女に、
『伏せて下さい、副領事!』
後から私服憲兵達の声が投げ掛けられた。
その言葉にびくりと反応を取り戻してすかさず床面に両手を着けた彼女の頭上で銃撃戦が展開され―\r
やがて空気を引き裂く咆哮が止むのを確認したテンペは恐る恐る首だけを背後に向けた。
そこには二人の男が仰向けに倒れ、全身に空いた穴から血と湯気と焦げた臭いを出していた。
思わず目をそむけた彼女に、
『これで君を守る者もいなくなったし、もうそろそろいいかな?我々も余り手荒な真似はしたくないんでね』
リーダー格の男が目配せすると、彼の部下の一人が彼女の腕を掴み上げた。
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