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航宙機動部隊第四章・42

[743]  まっかつ改  2010-05-20投稿
リク=ウル=カルンダハラが帯磁軌道発着場で見た物は、二人分の死体と七人分の気絶体、そして今しがた難を逃れた同胞とその原因を作った巫女姿の女性であった。
彼は鋭敏にもその有り様を眺めてすぐさま状況の九割以上を把握した。
だが、巫女姿の女性はその点に置いても少年を凌駕しているみたいで、
『あなたが共和国宙邦の総領事ね』
リクを認めるや即座に声をかけてきた。
その彼女の傍らには、テンペ=ホイフェ=クダグニン副領事が時間差を付けて襲ってきた恐怖心からか床面に両膝をついき、両腕で肩を抱き抱えながら文字通り心底震え上がっていた。
顔面蒼白なのは言うまでもなく、とても元気と呼べる状態ではなかったが、とにかく無事そうだったのでリクはほっと胸を撫で下ろし、
『宗教界の方ですか?副領事を守ってくれた事に感謝します』
白銀に輝く腰帯から下げた銃受けにハンドレイをしまい込んだ。
安史那晶子は緑の聖石を鈍く光らせながら、
『事の次いでだったのだけれどね―太子党が執拗なのかあなた達が相当派手にやっていたのか、或いはその両方かしらね』
リクは深々と頭を下げ、
『何かお礼が出来れば良いのですが』
『お礼?元々あなた達を探してここに来たんだし特に要らないわよ』
しかし、何かに気付いたのか晶子は人差し指を頬に当ててやや考える素振りを示し、
『そうね―お礼ではないけれどもあなた達の住んでいる場所まで案内して貰おうかしら』
積もる話もある事だしね、と言って聖波動師は磊落な笑みを見せた。
リクやテンペに異存があろう筈が無く、彼等は二つ返事で承知した。
呆れた事に、先の銃撃VS聖波動戦があってからとっくに二0分は経とうと言うのに、目撃者も三桁に上ろう筈なのに、皆通報を躊躇っていたのか、船内警備も憲兵もやって来る気配すらない。
リクは周囲を遠巻きに囲む様にして立ち尽くす部外者達に軽く舌打ちしてから、自身のパネルカードでムハマド=ハザイ憲兵大佐に直接連絡し、事件の後始末を要請する。
パネルカードを少年が切るのを見計らって、
『それではもう行きましょう―ここに留まって第二第三の下手人に出くわすのも割りに合わないですしね』
晶子は二人を促し、彼女達は野次馬達に見送られながら折よく到着した立体列車に乗り込んだ。

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