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夢十夜 〜第七夜〜

[589]  シナド  2010-05-25投稿

こんな夢を見た。

私は絵描きであった。

何年も何年も一つの絵を描いている。

この世界のあらゆる不幸と災厄が描かれた絵だ。

私は白いキャンパスに油絵の具を塗っていく。

描いても描いても絵はできあがらない。

キャンパスはどんどん大きなものになってゆく。

不思議なことに私が絵に描いた不幸は全て現実となった。

戦場を描けば戦争が起こった。

水に流される家々をかけば洪水が起こった。

だが私は描くことをやめられない。

なんでか皆がその不吉な絵の完成を望んでいた。

いつしか私の描く災厄で世界は荒廃した。私は満身創痍になりながら荒野で絵を書き続ける。キャンパスは地面を覆わんとするぐらい大きなものになっていた。

空は青く晴れ渡たり、地平線と接している。

燦々と太陽の光が降り注ぐ。

私は地に倒れ伏し、死んでゆく孤独な少女の姿を描いていた。

額から汗が後から後から流れ、手がぶるぶると震えた。

この少女を何とか救いたいと思ったが、筆を止めることは考えられなかった。

誰かが私の描く手を止めた。

白い服を着た、壮年の男だった。

男は青い、力のある目で私を見て言った。

「君はもう描かなくていいんだ。もう悲しい絵を描くことはない。」

男は優しく私の手を握った。

「さあ、この女の子を助けてあげよう。」

頭の中で水滴がぽたりと水面に落ちる音が響いた。

私は泣いていた。








そこで目が覚めた。

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