航宙機動部隊第四章・47
翌第一期一七日・シルミウム星系―\r
同星系外縁では統合宇宙軍本隊が集結と出撃準備を完了していた。
合衆国連合艦隊進発の報は、既に帝国側にも伝わっていた。
だが本来軍事機密である筈の星間機動部隊の様子がこうもあっさりと把握出来る分けがない。
結果から言えば呆れた事に、敵陣営はこの報をマスコミにリークしていた。
もっとはっきり言えば、自ら宣伝に努めすらしていたのだ。
それだけ連合艦隊は政治的には追い詰められていたし、軍事的には絶大な自信があったのだ。
つまり、統合宇宙軍の力を見くびっていた。
彼等はネット集合体に出撃時の撮影を全面的に許していた。
いつまた暴発するか分からないパレオス星民、離反するか分からない同政府を繋ぎ止める、それは苦肉の策であったのだろう―\r
帝国軍は敢えてアリ=アリアンス宙沖を敵手に委ねた。
要衝を一見手放したかの様に見えるこの挙は普通に考えたら愚策の筈だが、彼等には作戦上決戦場に後から出現する必要があったのである。
統合宇宙軍旗艦《スタニドルフ》―\r
皇帝エタンはとある薄暗い空間にいた。
そこは彼を除けば極一部のエンジニアや専門学者達しか侵入が許されない秘密の場所・開かずの間であった。
そこには無数の配線と無色有色のパイプが複雑に絡み合いながら所狭しと見渡す限りを埋め尽くしていた。
そして、その配線達の行く先々には巨大化した試験管型の透明の容器達が上下を逆さにして青白く輝いている。
辛うじて人一人が通れる通路の左右に上面に、それ等はほんの隙間にすら無理矢理押し込まれたかみたいにびっしりと林立していた。
エタンはその由来と中身を知っている―中に入っているのは人間の脳髄。
一つ一つの容器には、培養液に浸された脳髄が組み込まれ、下面からの光を受けてややピンクがかった白い照り返しを放っているのだ。
その数は二千。
複合連結型生体頭脳群―これこそがこの巨大戦艦の真の中枢であった。
素人ならば吐き気を催す光景であったが、そのただ中にいる筈の皇帝には怯む様子も怖じける調子も無い。
寧ろ彼にとっての難題は、床にすら這って回る配線に躓かない様気を付けて歩く事にあった。
五0Mも進んだであろうか、ふとエタンは足を止め、左やや斜め上の容器の一つに体を向けた。
それにはシンプルに《No.501》とだけ銘打ってあった。
同星系外縁では統合宇宙軍本隊が集結と出撃準備を完了していた。
合衆国連合艦隊進発の報は、既に帝国側にも伝わっていた。
だが本来軍事機密である筈の星間機動部隊の様子がこうもあっさりと把握出来る分けがない。
結果から言えば呆れた事に、敵陣営はこの報をマスコミにリークしていた。
もっとはっきり言えば、自ら宣伝に努めすらしていたのだ。
それだけ連合艦隊は政治的には追い詰められていたし、軍事的には絶大な自信があったのだ。
つまり、統合宇宙軍の力を見くびっていた。
彼等はネット集合体に出撃時の撮影を全面的に許していた。
いつまた暴発するか分からないパレオス星民、離反するか分からない同政府を繋ぎ止める、それは苦肉の策であったのだろう―\r
帝国軍は敢えてアリ=アリアンス宙沖を敵手に委ねた。
要衝を一見手放したかの様に見えるこの挙は普通に考えたら愚策の筈だが、彼等には作戦上決戦場に後から出現する必要があったのである。
統合宇宙軍旗艦《スタニドルフ》―\r
皇帝エタンはとある薄暗い空間にいた。
そこは彼を除けば極一部のエンジニアや専門学者達しか侵入が許されない秘密の場所・開かずの間であった。
そこには無数の配線と無色有色のパイプが複雑に絡み合いながら所狭しと見渡す限りを埋め尽くしていた。
そして、その配線達の行く先々には巨大化した試験管型の透明の容器達が上下を逆さにして青白く輝いている。
辛うじて人一人が通れる通路の左右に上面に、それ等はほんの隙間にすら無理矢理押し込まれたかみたいにびっしりと林立していた。
エタンはその由来と中身を知っている―中に入っているのは人間の脳髄。
一つ一つの容器には、培養液に浸された脳髄が組み込まれ、下面からの光を受けてややピンクがかった白い照り返しを放っているのだ。
その数は二千。
複合連結型生体頭脳群―これこそがこの巨大戦艦の真の中枢であった。
素人ならば吐き気を催す光景であったが、そのただ中にいる筈の皇帝には怯む様子も怖じける調子も無い。
寧ろ彼にとっての難題は、床にすら這って回る配線に躓かない様気を付けて歩く事にあった。
五0Mも進んだであろうか、ふとエタンは足を止め、左やや斜め上の容器の一つに体を向けた。
それにはシンプルに《No.501》とだけ銘打ってあった。
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