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ベースボール・ラプソディ No.34

[607]  水無月密  2010-05-26投稿
 石塚が打席にたつと、哲哉は即座に観察をはじめていた。
 立ち位置、バットの握り方、骨格などを見極め、事前に得ていたデータと照合して石塚への配球を決めた。

 内角高めに三速の直球を要求する哲哉。
 それに小さくうなずくと、八雲は大きく振りかぶった。

 哲哉がかまえたミットへ、吸い込まれるように突き進む白球。
 石塚は微動だにせずにそれを見送った。

 内角高めを苦手とする打者は多い。
 だが、高校球児としては小柄な石塚はスタンスもそれほど長くはなく、どちらかといえば内角を得意としていた。
 それを知りながら、敢えて哲哉が内角から攻めたのは、石塚が高い確立で初球を見送ることを知っていたからだった。


 二球目には外角高め、七速の球をボール一個分外しての勝負。
 石塚はこれも見送っていた。

 石塚の選球眼の良さを知り、哲哉は直ぐさま記憶データに修正をかける。
 そして選定した三球目は、初球と同じ内角高めだった。
 ただし、内側にボール半個分外した四速と微妙に変えていた。

 対する石塚は、八雲のピッチングに目を見張っていた。
 初球は百二十四キロ、二球は百三十六キロと哲哉の要求通りに誤差なく投げ込んだ八雲。
 その投球フォームに、僅かな違いもみつけられなかったのである。

『…結城だけのワンマンチームかと思ってたが、大澤は完全復活してるみたいだし、それに加えてこれほどのピッチャーを隠しもってたとはな』
 身構える石塚は、やみくもにバットを振っても打てぬと判断し、高低は捨てて内か外かだけに山を掛けた。


 八雲の手元から三投目がはなたれると、石塚はわずかに身体をひらいてバットを繰り出した。
 山は見事に当たり、繰り出したバットが白球をとらえる。
 だがここで、石塚に想定外の事態が起きた。

 八雲の直球をとらえた瞬間、石塚はあまりの球威に手の感覚を奪われた。
 打球はかろうじて前にとんだものの、勢いなく三塁方向に転がっていた。

 深めの守備をとっていたサードの織田は、猛ダッシュで打球にむかう。
 直接右手で打球を掴んだ織田は、そのままファーストの大澤へと送球する。
 大澤の捕球とほぼ同時に一塁を駆け抜ける石塚。

 その判定に、球場全体が息をのんだ。


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