携帯小説!(スマートフォン版)

[337]  かなりあ  2010-06-08投稿
あたしの額に額を押し付けたまま、君は静かに歌い出した。

流れるような歌だった。

たゆたうような歌だった。

その調べは子守唄とよく似ていて。

あたしはいつしか泣き出していた。

心が洗われていった。

気持ちが澄んでいった。

もう何も怖くないよ、と。

君はやわらかな唇を微笑ませて教えてくれた。

あたしは泣きじゃくったまま、何度も何度も頷く。

温もりってこういうこと。

命ってこういうこと。

それを信じさせてくれた。

何もなかったあたしに、意味を与えてくれた。

奇跡の中に連れ戻してくれた。

ありがとう。

そんなんじゃ足りないけど。

せめて一万回くらい言わせてほしい。

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