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かけがえのないもの 4

[502]  デフレーター  2010-06-23投稿
隼人と瑠奈の二人分、オムライスが並んだ食卓に

兄妹は向かい合って座った。

昔からもう何度も繰り返されてきた食事の風景。

「うーんやっぱお兄ちゃんのオムライス最高!食べなくても美味しいって分かるよ。」

「子供の頃から何度も作ってたからね。瑠奈のために。」

とにかく褒めちぎってくれる瑠奈に、隼人は照れ笑いを浮かべる。

「ありがとう、お兄ちゃん。いただきまーす」

「いただきます」

二人はオムライスを一口ずつ頬張った。

「んー!これこれ!私が大好きなオムライス。昔からすごく好きだった味!」

「ありがとう…瑠奈」

本当に美味しそうに夢中でオムライスを食べる瑠奈を、隼人は真剣に見つめた。

「どうしたの、お兄ちゃん?顔にケチャップついてる?」

「いや…瑠奈、あのさ…」

「なぁに?」

隼人は口を開けかけては閉じ、言葉を探した。

「寂しくないか?父さんも母さんも遅いし。」

瑠奈は一瞬呆然と隼人を見たがやがて声を出して笑った。

「…ふふ…ははは!もうやだーお兄ちゃんったらー!」

「何がおかしいんだよ。」

隼人は少しムッとした。

「お兄ちゃん私が来るたびにおんなじこと聞くよね。」

「だって心配だしさ…」

隼人はそう言いながら、家を出る時のことを思い出した。−−−

「お兄ちゃん、ほんとに行っちゃうんだね…」

瑠奈は少し寂しそうな表情で隼人に寄り添った。

「うん。大学、ちょっと遠いから…」

「だよね…」

隼人は瑠奈の頭をごしごしと撫でた。

「大丈夫だよ。もう会えなくなるわけじゃないんだし…電話もメールもできるじゃん。」

「うん…そうだね。いつでもお話できるもんね。」

瑠奈は満面の笑みで隼人を見上げた。

その笑顔が無理をしているようで、隼人は罪悪感すら抱いた。

「瑠奈、お兄ちゃんがいなくても、寂しくないよね?」

「うん!もうこれっきりサヨナラってわけじゃないんだし、お父さんもお母さんもいるから…だから…」

瑠奈は隼人の目をしっかり見て言った。

「私のことは心配しないで、一人暮らし頑張ってね、お兄ちゃん!」

瑠奈の言葉が本心でないことを、隼人は知っていた…


続く

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