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欲望という名のゲーム?13

[389]  矢口 沙緒  2010-06-25投稿



1、五人の子供の内、自分の死亡時点で成人に達している者に、財産を均等分配する。


2、五人の子供の内、自分の死亡時点で成人に達していない者がある場合、財産を均等分配された者が均等に、その者が最終学業終了まで、学費及び生活面での一切の面倒を見る事。

3、五人の子供の内、自分の死亡時点で成人に達していない者は、最終学業終了後、財産均等分配者より五千万円の支給を受ける権利があり、財産均等分配者は均等にこれを支払う義務を負うものとする。


以上が雷音寺重吉様の遺言の主な部分です。
いささか込み入っているように聞こえるかも知れませんので、実際の例に当てはめて説明して行きましょう。
まず、雷音寺重吉様が亡くなられた時点で成人されていたのは、五人の相続者の内の雅則様ただお一人でした。
従いまして、雷音寺財閥の全財産を、雅則様お一人が受け継ぐことになりました。
雅則様は重吉様の遺言に従い、明彦様、喜久雄様、深雪様、そして孝子様に対しまして、学費及び生活費、あるいはそれ以上のご援助をなさってきました。
そしてもうひとつ、明彦様と喜久雄様は大学を、深雪様は短大をご卒業時点で、五千万円の最終支給を受け取られているはずです。
孝子様に関しましては、現在も大学院のほうに在籍しておりますので、最終学業終了とは言い難く、従いまして第3項には当てはまりません。
つまり雅則様は、全ての責任を確実に果たしたのです。
ここまではよろしいですか?」
「何が責任を果たしただ!」
明彦が吐き捨てるように言った。
「兄貴は財産を独り占めしただけじゃないか!
自分だけこんな所で優雅に暮らしやがって」
「そうよ、五千万ぽっちでごまかして!」
深雪が感情的な声を上げる。
鹿島はコホンと小さな咳払いをしてから、再び口を開いた。
「ここでお間違いのないようにご注意願いたいのは、雅則様がお一人で財産を相続なさったのは、雅則様が勝手になさった事ではなく、あくまでも皆様のお父上の意志だという事です。
それにもうひとつ、雅則様は結果的に財産に手を着けていないという事実です。
それどころか雅則様は、その独自な才能で現在まで着実に財産を増やし続けてきたのです。」
そこまで言って、鹿島はパタンとノートを閉じた。

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