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子供のセカイ。178

[456]  アンヌ  2010-06-25投稿
「お前、私の頭の中に興味でもあるのか?」
ジーナはわざとからかうような口調で答えた。まるで「私に興味があるのか?」と言っているように聞こえ、周囲から面白半分の野次が飛ぶ。ルキはフン、と鼻を鳴らすと、ハント同様不機嫌になり、ジーナから離れていった。
その時、突如中庭全体に、大きな黒い影が落ちた。頭上から凄まじい強風の圧力がかかり、そこに居合わせた全員の髪がなぶられ、やわい草はちぎれて飛び散る。王子は思わずぎゅっと目を閉じ、ジーナは縛られた両腕を振り上げ、頭を庇った。治安部隊の若者達も拳を握り締め、足を踏ん張っている。
それと同時に、空からしゃがれた声が降ってきた。
「伝令、伝令。覇王様が治安部隊の隊長ハントをお呼びだよ。さっさとコルニア城へ行きな。」
それだけ言って、声はすぐに途絶えた。他の若者達につられてジーナと王子が空を見上げた時、そこにはすでに誰もいなかった。僅かに白い雲がたなびく薄青い空が、引き伸ばされたように、どこまでも広がっているだけだ。
王子は疲れも吹き飛んだ顔で、ただぽかん、と口を開けていた。
「今の、何?」
「……、さあな。」
ジーナが構えを解きながら肩をすくめて返した時、ざわざわと騒いでいた若者達の声が静まった。見ると、ハントが片手を挙げていた。
「ハント……。」
先程までジーナにあしらわれて不機嫌極まりない顔をしていたルキが、今は緊張した面持ちでハントを見ている。
ハントは俯いていた。ジーナは彼の黒い瞳が、一瞬、切れるような鋭い眼光を宿して地面を睨んだのを見逃さなかった。
ハントは目元を険しくしたまま顔を上げると、そこに居合わせた面々を見回し、きつい声音で言った。
「オレはこれから、コルニア城へ行く。もし万が一のことがあれば、何をすればいいのか、テメェらわかってんだろーな?」
腕や足をむき出しにしたたくましい青年達は、瞬間、互いに顔を見合わせたが、やがて皆、にやりと笑ってハントに頷きかけた。
それを見て、ハントの顔にも凄惨な笑みが広がる。
そのままの表情を、今度はジーナと王子に向けた。
王子は昨日のことがあった手前、ぐっと息を呑んでハントを睨み、ジーナは冷静な態度を貫いていた。

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