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かけがえのないもの 17

[444]  デフレーター  2010-06-26投稿
「瑠奈…死んじゃったの…?ほんとに…」

「うん…できれば…もっともっとやりたいこと、あったんだけどね…お父さんとお母さんにも、ありがとうって言いたかったけど…時間、少な過ぎるんだよね。」

瑠奈は隼人の顔を両手で包んだ。

「でもね…私、今すごく幸せだよ。お兄ちゃんと、思い出共有できたもん。お兄ちゃんが、私の事ほんとに大切にしてくれてるって分かったんだもん。あー…お兄ちゃんの妹で良かった。」

「瑠奈…お兄ちゃんも、瑠奈が妹で良かったよ…」

隼人は瑠奈をしっかりと抱きしめた。

「でもね、お兄ちゃん…私、もっとやりたいことあったんだ…私…お兄ちゃんと…」

瑠奈は次の言葉を口にしかけたが、途中で躊躇った。

「ううん。やっぱりなんでもない。恥ずかしいや。」

「なんだよ…」

隼人は寂しげに微笑んだ。肝心な時に素直になれない。俺はやっぱり瑠奈と兄妹なんだな、と思う。

「お兄ちゃん…」

「どうした?瑠奈…」

「そろそろ…バイバイの時間になっちゃうみたい…」

見ると、瑠奈の体が少し透き通っていた。隼人は震えが止まらなかった。

瑠奈が消えてしまう…もう、会えなくなってしまう…

「瑠奈…」

隼人のあまりに悲しげな顔を見て、瑠奈は笑った。

「もうー!そんな顔しないの!…これからだって…ずっと側にいるんだから…」

「え…?」

徐々に透き通りながら瑠奈は微笑んだ。

「お兄ちゃん…いつも私のこと、気にかけてくれた。守ってくれた。だから今度は、私がお兄ちゃんのこと、守る番だよ。」

「俺を…守る?」

「うん!お兄ちゃんがこれからも元気で、大活躍出来るように。」

隼人の腕の中で、瑠奈は輝いているように見えた。

「壁にぶち当たったら、乗り越えられるように手助けしてあげる。疲れたり落ち込んだりしてたら、夢の中に出てきて励ましてあげる。」

隼人はさらに強く瑠奈を抱きしめた。

半透明なはずなのに、瑠奈の温もりが、確かに感じられた。

「瑠奈…ありがとう…本当に…」

「お兄ちゃん…力強すぎるよ…あはは」

瑠奈が見せた笑顔は、今までで一番素敵なものに思えた。


続く

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