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かけがえのないもの 18

[440]  デフレーター  2010-06-26投稿
「瑠奈…」

隼人は精一杯笑顔を作って瑠奈に話しかけた。

「お兄ちゃんの妹に産まれてきてくれて…本当にありがとう。」

「お兄ちゃんも…私のお兄ちゃんでいてくれてありがとう。」

瑠奈はそう言うと目を閉じて隼人の頬に顔を近づけ、そこにそっと唇を付けた。

「瑠奈…」

「お兄ちゃん…これからもずっとずっと、私はお兄ちゃんのこと見てるよ。夢の中でお話だって出来る。だから…悲しまないでね?」

「うん。瑠奈が側にいてくれるなら…心強いよ。」

隼人の言葉に瑠奈は安堵の笑みを浮かべた。そして…みるみる宙に溶けていく。

「瑠奈…?」

「もう、行かなきゃ…」

瑠奈の笑顔も、もううっすらとしか見えない。

「明日、お父さんとお母さんの所に帰るから…お兄ちゃんも絶対来てね。」

「うん…」

「もし生まれ変わっても、私達、ずっと仲良しでいようね…ありがとう、お兄ちゃん…大好きだよ…」

その言葉と微笑みを残して…瑠奈は…消えた。

時計の針は12時を回り、日付が変わっていた。

隼人はその場に倒れ込んだ。悲しみを通り越してしまったのか、涙は出てこなかった。

ただ、心にぽっかりと大きな穴が開いてしまった。頭の中も空っぽだ。

隼人はそのまま、眠りに落ちてしまった。


翌日、隼人は実家に急いだ。

「隼人…」

父と母が出迎えてくれた。どちらも神妙な面持ちだ。母の目から涙が流れている。

「父さん、母さん…」

「瑠奈は…部屋にいるよ…」

両親に先導され、隼人は部屋に入った。

「瑠奈…」

瑠奈の体がそこにあった。その顔は安らかだった。ただ眠っているだけのように…

だが、瑠奈の姿を目の当たりにして、隼人はようやく現実を受け入れた。

瑠奈はもう決して目覚めない。笑わない。泣かない。怒らない…

「あんなに元気だったのに…どうして…」

泣き崩れる母を、父が支える。

隼人はしばらく黙っていたが、やがて両親を見て口を開いた。

「…ごめん。しばらく、瑠奈と二人きりにしてほしいんだ…」

「分かった…瑠奈も…きっと喜ぶだろう。な、母さん…」

「ええ…」

両親が部屋を出ると、隼人は瑠奈の側に座った。


続く

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