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かけがえのないもの エピローグ −隼人の幸せ−

[463]  デフレーター  2010-06-27投稿
瑠奈の死から1年が経った。

隼人は瑠奈の墓前に手を合わせていた。

「瑠奈…天国で元気にやってるか?…俺は、辛いこともたくさんあるけど…幸せにやってるよ。」

瑠奈の安心したような笑顔が目に浮かぶ。

瑠奈が旅立ってから、隼人は何度となく困難にぶつかった。しかし不思議と乗り越えるきっかけが見つかり、挫けずに進むことができた。

瑠奈が旅立つ前夜に言っていたように、瑠奈は度々隼人の夢の中に現れた。

「お兄ちゃん、あまり無理しちゃだめだよ。」

瑠奈はいつも、夢の中で隼人を癒してくれた。

そして1ヶ月前、隼人には恋人が出来た。

大学の同級生・沙織。

沙織は幼い頃に両親を亡くし、兄と二人きりで助け合って生きてきた。彼女もまた、1年前にバイク事故で最愛の兄を亡くした。

隼人と沙織はたまたま同じ授業の隣の席で話すようになった。同じような境遇で育ってきたことで互いに励まし合うようになり、

二人はやがて交際を始めた。

沙織は瑠奈に似ていた。笑顔も、声も。瑠奈の生まれ変わりなのではないかと思った。

沙織にとっても、隼人は兄を思い起こさせる存在だったようだ。

瑠奈は夢の中で、隼人を祝福してくれた。

「おめでとう、お兄ちゃん。沙織さんのこと、大切にしてあげてね。」

「ありがとう、瑠奈。」

「でも…あんまりイチャイチャしてると…妬いちゃうかも」

瑠奈は照れたように笑っていた。

「ずっとずっと、幸せにね!全力で支えるから!」

今、沙織は隼人の横で墓前に手を合わせていた。

「瑠奈さん、私達のこと、喜んでくれてるかな?」

「うん。喜んでくれてるよ。瑠奈は…」

隼人は左手に光る瑠奈のプレゼントを見て、空を見上げた。

瑠奈…瑠奈が守ってくれてるおかげで、今お兄ちゃんはすごく幸せです。

見えなくても…側にいてくれるのが分かる。

でも、これからは瑠奈の力がなくても壁を乗り越えられるように、頑張ってみるよ。

瑠奈がこれからも安心して、俺を見ていられるように…

瑠奈は…いつまでも俺の大切な存在だから。

大好きだよ、瑠奈…天国でもいつも笑っててくれよ。

空に浮かんだ雲は、瑠奈の笑顔の形をしていた。



FIN

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