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欲望という名のゲーム?29

[420]  矢口 沙緒  2010-06-30投稿



「この貯蔵庫の広さは、屋敷の敷地面積とほぼ同等です。
ここにいったい何万本のワインがあるのか私は知りません。
おそらく雅則様も、その正確な数までは知らなかったでしょう。
このワインのほとんどは、屋敷の前の持ち主の物だったのです。
雅則様が屋敷をお買いになられた時、このワインのコレクションも一緒に引き取られました。
というよりも、むしろこのワインのコレクションがあったからこそ、それを屋敷ごと買われたといったほうがいいかも知れません。
ワインはとても敏感なお酒ですので、空調設備などにより、この部屋は一定の温度、一定の湿度に保たれています」
「珍しいワインなんかもあるんですか?」
と友子。
「多数あるようです。
ただ私個人はワインの知識がありませんので、よくは分からないのです」
「ここは寒いわ。
もう上に行きましょうよ」
深雪が両手で肩を抱きながら提案した。
ホールに出て、一同が二階に上がる階段に向かっている時、孝子が鹿島に質問した。
「ねぇ、あそこにある甲冑、とっても素敵ね。
雅則兄さんの趣味?」
いえ、あの鎧はこの屋敷を購入した時からありました。
なんでもジャンヌ・ダルクの着用していた物と同じ型の鎧だそうです」
「ジャンヌ・ダルクって、あの百年戦争の女戦士の?」
「はい、女性があのような物を身にまとって戦っていたというから驚きです」
二階に到着すると、鹿島は振り返った。
「二階の六部屋につきましては、雅則様の言葉を借りれば、特別除外エリアという事になりますので省きます。
三階のご案内を致しましょう」
一、二、三号室の前を通りすぎると、右手に上への階段が続いている。
「ちょっと孝子。
あんたは宝探しに興味がないって言ってたくせに、なんでついてくるのよ」
三階に向かう階段を昇りながら、深雪が孝子に聞いた。
「だって、ちゃんと案内してもらわないと、後で迷子になっちゃうもん」
その孝子の答えに、
「ふん!」
深雪はそう言ったきり、さっさと上に上がって行った。

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