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ベースボール・ラプソディ No.39

[575]  水無月密  2010-06-30投稿
 ベンチにもどる石塚は、今一度グランドに視線をむけた。
 軽快にボールを回す橘華ナインの中、笑顔の八雲は誇らしげに仲間達を眺めていた。

 いいチームだと、石塚は感じていた。
 打力には課題があるものの、守備力だけをみればかなりのレベルである。
 なにより橘華ナインは、野球を楽しんでプレーしている。

 あるいは、この地区で難攻不落となった成覧の牙城を崩せるのは、このチームではないかとも、彼は考えていた。


 士気のあがる橘華ナインの中、一抹の不安を抱えた哲哉だけがうかぬ顔をしていた。
 石塚から三振を奪えなかった事実が、対成覧戦に暗い影をおとしていたのだ。

 石塚は打者として一流であり、成覧に入学していたとしてもレギュラーになれていただろう。
 だが、クリーンナップを任されたかどうか。
 その石塚から三振を奪えなかった以上、成覧打線から三振は簡単には奪えないだろう。


 元々八雲の球威がある球は、三振をとるよりも打たせてとる戦術にむいていた。
 この試合においても、初回こそ三者三振を奪ったものの、二回以降は全て打ち取っていた。

 アウトが取れるのならばそれで善しとも考えたが、一点を争う接戦になれば三振が必要な場面が訪れるはず。
 成覧戦はそういう試合になると、哲哉は予測していた。



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