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欲望という名のゲーム?39

[383]  矢口 沙緒  2010-07-04投稿



    2

誰かが鹿島の部屋をノックする。
「どうぞ」
鹿島の声と同時にドアが開いて、孝子が顔を出した。
「あの…
ビデオテープを取りにきたんですけど…」
鹿島はちょっと驚いた顔をしたが、すぐにテープを手渡した。
「私がどうかしたのかしら?」
孝子は鹿島の表情が気になって聞いた。
「いえ、確か孝子様は宝探しには興味がないと、そう伺っていたものですから、ちょっと驚きまして…」
「今も興味はないわよ。
宝探しより面白い本が、図書室にいっぱいあるもの。
ただこのテープは、お兄さんの姿が映ってるから、貰っておきたいの。
私、お兄さんの事知らな過ぎるから。
本当の兄弟なのに、ほとんど何も知らないから。
それって、ちょっと淋しいじゃない。
このテープを見れば、少しはお兄さんに近付ける気がすると思う。
それだけなの」
「失礼しました。
どうぞ、お持ちください」
「ありがとう」
そう言い残して、孝子は去った。

深雪は屋敷の中を歩き回っていた。
手に紙とボールペンを持って、この屋敷の見取り図を書いているのだ。
彼女はあの金属製の雅則の笑い顔が、この宝探しに関係があると信じていた。
それが、どことどこにあるのか、彼女はそれを屋敷の見取り図に書き込んでいた。
絶対に見付けてやる。
深雪は心の中で、何度も繰り返した。
あたし一人で、絶対に見付けてやる。

喜久雄と友子は花畑の真ん中で、呆然と立ち尽くしていた。
三色スミレがなかったわけではない。
その反対で、あまりにもあり過ぎるのだ。
この巨大な円形の庭の、車寄せの道を除いた全てが、花畑になっている。
屋敷の裏にも芝生などはまったくなく、あたり一面がいろいろな花で埋まっていた。
その花の中のいたる所に、三色スミレがあった。
特に群集している箇所はなく、庭全体にまんべんなく点在しているのだ。
それでも二人は諦めず、手分けして庭の花の中をくまなく探索した。
前屈みになり、あるいは土に膝を着き、懸命に三色スミレを見て回った。
二人が作業に見切りをつけた頃には、すでに日が傾いていた。

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