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欲望という名のゲーム?40

[391]  矢口 沙緒  2010-07-04投稿



三階四号室の明彦は憤慨していた。
そして、自分の兄を呪う言葉を、さんざん喚き散らした。
ここにあるゲームの数は、いったい何なんだ!
いくらマニアだからって、収集するにもほどがある。
正常な人間のする事じゃない!
そんな事を言いながら、それでも『猫』あるいは『パブロ』に関係するゲームがないか、部屋中にあるコンピューターゲームを見て回った。
この男もまた、二百八十億に取り憑かれていた。

結局三号室と四号室の全てのゲームを見たが、何の手掛かりもなかった。
しかしこの、何の手掛かりもない、という事が、明彦に大いなる疑問を抱かせた。
なぜ、手掛かりはないのか?
これだけ膨大な量のゲームだ。
『パブロ』はともかくも、なぜ『猫』の出てくるゲームはないのか?
彼はゲームの事など、全くの無知だった。
だが常識的に考えて、猫というキャラクターは、ゲームに登場しやすいはずだ。
それが一つもないのは、余りにも不可解だった。
その答を求めて、明彦は部屋中を歩き回りながら考えた。
なぜ『猫』はないのか?
そして、一つの結論にたどり着く。
それは、猫の登場するゲームを、事前に全て処分してしまったのではないのか?
もちろん、それをやったのは雅則だ。
では、なぜ?
きっと混乱を防ぐためだ。
例えば、猫の登場するゲームが百以上あったとする。
そうなると、それを調べ尽くすのに、一週間の大半を費やしてしまうだろう。
そんな意味のない混乱を防ぐために、宝探しに不必要な『猫』を、前もって処分したのではないのか?
明彦は、さらに踏み込んで考える。
ここまでの推論が正しいとするなら、逆にこうは言えないだろうか?
つまり、この屋敷のどこかに『猫』があって、その『猫』は宝探しに必要だと…
その時、ドアをノックする音がして、孝子が顔を出した。
「あら、お兄さん、こんな所にいたの?
あのね、もう夕食だから呼んで来なさいって、鹿島さんが…」
「もうそんな時間か。
分かった、すぐ行く」
孝子は明彦の周りに散乱しているゲームを、ちらっと見た。
「がんばるわね」
そう言ってドアを閉めた。

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