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The Last Escape 第一章『寒波』 3

[337]  エアロ  2010-07-05投稿
それから少し歩くと、彼の予想通り、そこにはさらさらと、川の流れがあった。
「少し、休憩にしよう」
と、アルファが言い終えるや否や、私は膝から崩れ落ちた。

「食料を探して来るから、見張っておいてくれ」
とだけ言うと、彼はすたすたと川の石を渡って行ってしまった。

私はゆっくりと、川に近づいていった。
少しだけ、水に触った。
「冷たいっ!」
そのまんまのリアクションだ。

川はどんよりとした曇り空をそれに映し、なんだか冴えない眺めだった。

さてと、私も真面目に見張ろうかな、と立ち上がってみた。


まあ、待てど暮らせど誰も来ない。
もしかして、警察も大した事ないの?

そう言えば、アルファはどうして追われているのだろう、と私は思った。

まさか彼が…

いや、違う。だったら、自分が不利になるだけの現場検証を自ら申し出る筈がない。


足音。
私は勢いよく振り向いた。
ジャンパーの赤い袖が一瞬見えたが、それまでだった。視界が、ぐらりと傾いていった。













パチパチと可愛らしい音がする。

ふと横に目をやると、
ジャンパーもパーカーも脱いでタンクトップ姿の…しかもずぶ濡れのアルファが、そこにいた。

いつの間にやら作った焚き火に、寒そうに手をかざしている。

「落ちたの?」
「一応、お陰様で…だな」
さっき、私が川に落ちそうだったのを、彼は助けようとして飛び込んだ。
…のに、私は川には落ちず、無駄だったという訳だ。
「そうだったんだ…」
アルファの迂闊さを知り、私は何となくほっとした。


彼は微かに震える手で、飛び込む前に脱いでおいたらしいジャンパーを羽織った。
余りに寒そうで見ていられず、私は彼の腕をぎゅっと抱き締めた。
「これで、ちょっとは暖かい?」
彼の顔に、赤みがさしてきた。けれど、依然として彼は、震えていた。

風邪なんか引かないでね、と、私はもっと、強く抱き締めた。


異様に冷たい肌に触れていて、私は、いつの間にか眠ってしまっていた。

逃亡中なのに、信じられないほど安心しきっている私がいた。

第二章 『眠り』(予定)に続く

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