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日常

[386]  デフレーター  2010-07-06投稿

目覚まし時計が鳴る。
まだ眠っていたいのに、否応なしに覚醒させられる。
起きる。
体がだるい。いっそのことこのまま動かなければいいのに
ベッドから抜け出す。
大きくあくびと伸びをして
洗面台に向かう。
顔を洗い、歯をみがき、髪を整える。
別にしたくもないのに。
堅苦しいワイシャツと、堅苦しいスーツを来て、ネクタイを己の首に巻く。
なぜわざわざ己の自由を自ら奪わなければならないのか。
朝食を食べる。
いつにも増して食欲がない。
しかし食べなければ
今日一日を乗り越えられない。
鞄を抱え、靴を履き、玄関を出て、駅へ向かう。
うっとうしい満員電車にわざわざ乗って
もみくちゃにされながら
行きたくもない会社に足を運ぶ。
働かなければ明日はない。
何かに取り憑かれたように、やりたくもない仕事をこなす。
部下のミスなのに自分が責任を問われ、上司に怒られる。
どうでもいい営業先に足を運び
心にもない媚びを売り、
自分にとって何の利益も生まない商談を持ち掛け、断られる。
そしてまた怒鳴られる。
使いもしない会議の資料をまとめ
疲れるだけの残業を終え
また満員電車でもみくちゃにされながら、
ふらつく足で家路につく。
シャワーでつかの間の安らぎを得て
軽めの夜食をとり、
一日が終わる。
こんな日々が
もう何千回、何万回と繰り返される。
俺は一体何をやっているんだろう。
なぜここまでして
苦痛でしかない日々を過ごしているのだろう。
一日の全ての行動が
俺の意思に反している。

生きるため?自分を高めるため?それとも金のため?
…くだらない。
生きるためなら親の脛かじってたほうがずっと楽だ。自分を高めるなら学校に行けばいい。金が欲しければバイトすればいい。
なぜこんな苦しみばかり味わわなきゃならないんだ…
そしてまた、いつも通りの朝が来た。
ベッドから抜けた時、俺は疑問の答えが分かった。
ふっ…そうだったのか…
半ば諦めたような、自嘲的な笑いを浮かべ、俺は今日も会社に向かう。








全身に、無数の糸をまとわせながら。



終わり

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