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ひきずり 前編

[749]  美羽  2010-07-07投稿
始めからおかしかった。 陰気だし、時々テレビがチラチラ乱れたり勝手についたりするし。

大学からやたら近いから即決しちゃったけど失敗したかな…なんて僕は考えていた。

日当たりは最高だし、風通しもいい。
唯一の不満は風呂がないことだけど、大学のシャワー室を使うから不便もない。
なのに、陰気だ。
不思議なくらい、どうしようもなく暗い。

時々水臭い、妙な匂いがする。腐った何か…とにかく嫌な匂い。
リフォーム済みとはいえ築年数はあるから下水処理に支障があるのかもしれないと考えていた。

でも引っ越しはかったるい…家賃だって安いし。

ダラダラ考えあぐねてると収納部屋から音がした。 三畳くらいしかない、物置部屋だ。

そこから音がする。
昼日中だというのに、影が差し、妙な夕暮れのように部屋が彩られた。

嫌だ。
開けない方がいい。

襖の前に立ち尽くし、僕は震えた。

真夏だというのに、芯から震えていた。

奥から聞こえるのは

水音…。


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