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マイホーム 2

[690]  デフレーター  2010-07-07投稿
西森一家は新居への引っ越しを済ませた。
玄関をあがると広大なホール
天井は高く、吹き抜けになっている。
「なかなかいい家じゃないかー。あの大家め、脅かしやがって。」
「ほんと!素敵な所ねー。」
「きれーい!」
義之と小夜子と未来が歓声をあげる。
そして、新居に興奮して廊下を走る翼。
「そんなに走り回ると転ぶわよ。」
小夜子が優しくたしなめる。
すると翼はまた走って家族の所に行き、言った。
「だってすげー広いし…」
「シッ!」
小夜子と未来が指を立てる。翼もハッとしたように手で口を押さえる。

「この家の広さを褒めないでください…」

あの時不動産屋が言った謎の条件。
家族全員が半ば冗談のように聞き流していたが、心のどこかで気に留めていたのだ。
「ま…まあ、あれもあいつの脅かしだろう、全く…」
義之は笑ったが、その笑いは引き攣っていた。
義之だけではない。家族全員がこの家に入った瞬間から、何かとてつもなく嫌な感じを覚えていた。
この家が西森一家を手招きしているような…家が狂った笑い声をあげているような…
その時、急に風が強くなった。
窓の外を見ると海も荒れてきている。
木々も折れんばかりに煽られている。
「台風でも来るか…」
「海が近いからかしらね…」
風は、これから西森一家を襲う惨劇の予兆であるかのように、激しく吹きすさんでいた…

一ヶ月後、朝食時になり、翼と未来が一階に下りてきた。
「おはよう。」
「おはよう。朝ごはん、出来てるわよ。」
小夜子は朝食をテーブルに並べていた。
「やっぱり海を眺めながらの朝食はいいものだな。」
義之がコーヒーを飲みながら微笑む。
「うん!…あのさ、お父さん、お母さん…」
翼が少し戸惑ったような表情で口を開く。
「なんだい?」
「この家…ちょっと広くなった気がする…」
「何を言ってるの。」
小夜子が可笑しそうに笑う。
「そんなわけないだろう。」
義之が同調する。
「私もそう思う。」
今度は未来が口を開いた。
「だって…ここに来るまでに知らないドアが一個増えてたもん」
「二人とも寝ぼけてるんだな。早くご飯食べなさい。」
「…」
家は、いよいよ西森一家に牙を剥きはじめた…



続く

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