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DUCKY BOY

[361]  ふく  2010-07-08投稿
あなたが使った歯ブラシは捨てた
一人の部屋に帰りそれを見たら寂しくなったから
会いたくなったから

あなたが突然部屋に行くからと言ったのを拒まなかったのは
あなたと居たかったから
一日の最後に『おやすみ』を言って一日の始まりに『おはよう』を言いたかったから

シングルベッドは二人では狭かったけど
あなたの肩や腕や手が触れるその温もりが嬉しかった

交わした軽い一回きりのキス
何の意味を持つのかは分からない
ただ一つ
私達はそれを一日の最後に眠った
隣で聞こえる寝息を
切なくも悲しい現実を
私は泣かないように強く目を閉じた

私を抱こうとした手を振り払ったのは
少し冷たくしてしまったのは
悲しそうな目をしたあなたに『ごめんね』と言ったのは
遠くにいる私の知らない恋人があなたにはいるから
あなたと居たくて受け入れたのに
あなた自身を受け入れてしまうのは怖かった

五歳年下のあなた
それを『若さ』だと簡単に片付けてしまえるのならそれでも良かった
苦しみなんて感じないと保障出来たならそれも良かった
望まなかった訳ではない
最後に理性が勝ったから
私自身を守りたかったから
『どうゆうつもり』かなんて聞かない
理由なんてもういい
手の届く所に私が居ただけの事
人間なんてそんなものかもしれない
寂しい時
人恋しい時
自分を受け入れてくれる物に手を伸ばしてしまう

だから職場では何もなかった様に振る舞った
あなたに気持ちを残さない様に自分に嘘を付いた
わざと別の男性と仲良く話してみたり
楽しそうに笑ってみたりした

そうね
情けない
大人の振りしたつもりがただの強がりになり
子供みたいに意地を張っているだけ

その日に何度か感じたあなたの視線
本当はあなたを見て照れ臭そうに笑えたらどんなに良かっただろう
少しは可愛い女になれただろうか

帰った一人の部屋は悲しすぎて泣いた
お互いを想ってはいけないと思うから気持ちを押し殺して泣いた
奪える勇気も自信もないから泣いた
『遊びでもいいから』なんて言える程私は強くはない


強くなる想いに気付き
それでも踏み込めない現実を壊せない弱さを知り泣いた

そしてまたあなたを想い
声を押し殺して静かに泣いた

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