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誰がために、何がために?

[342]  萩原実衣  2010-07-11投稿
身体が動かない…。
手術からまだ2日後だからだろうか。

まぁ、今…焦っても仕形がないか。

日頃、忙しくて寝る暇が欲しかったくせに、もう…寝ている事に飽きた。
つくづく勝手な思いだ。楽しみといったら、食事と若い看護士との会話だけだ。

「よっ!」
現れたのは、親友?悪友?…腐れ縁の大悟(だいご)だ。
「おぉ、とりあえず暇つぶし用品持ってきたか?」
「そんだけ、うっせぇ事言えるんだったら、大丈夫だな!ほら」

「流石!大悟ちゃん。わかってるねぇ。」

大悟は、俺が欲しがっていた物を完璧に持ってきてくれた。
「空斗まだ寝たままか?」

「脊椎やっちまったらしいから、もうしばらくはな…」

「休暇にしても、ちょっぴり辛い休暇になっちまったな。」

流石に長い付き合いだと楽だ。大悟は、俺が不安にならないように微妙な心のコントロールをしてくれる。
本人には、死んでもそんな誉め言葉は、言いたくない。

2、3時間して大悟は、帰った。
病院ていうのは、暇なところだ。
会社の人は、一度、部長が来たきりだ。
同僚さえ来ない。

まぁ、俺も昔はそうだったから人の事をとやかくいうつもりはない。

しばらくして…担当医が来た。
「調子はどうですか?…」
「だいぶ楽になってきました。」

「そうですか?術後の経過と身体の反射の診断をします。」

「…はっはい」

僕は、はやく連絡したく「感じますか?」

「いえ…。」

医師がなにやら俺の足元で何やらやっていた。
俺は、全く解らなかった。

「…。高嶋さん」

嫌な雰囲気になってしまう。

「やはり…脊椎の損傷による、麻痺が残ってしまったようです。リハビリによって、少しは、よくなるでしょうが…。
車いすでの移動が中心になるでしょう…。」

全く思考が働かない。

ヤバい。

人生で一番…ヤバい。

下半身不随と急に言われて戸惑わない人なんていないだろう。

なんとも言えない、怒りと絶望感だけが頭の中を支配した。
いっそのこと死んでしまったほうが良かった。
俺は、自分の足を叩いてみた。…痛くない。
何度も叩いた。

感じてくれ。

涙が止まらない。

俺の人生は、なんだったんだ。
これから俺の生きる意味があるのか…?
麻耶もきっと…離れるだろうな。
仕事もきっと…。

全てを失うのだろうか…?
現実から逃げたくてただただ眠り続けた。

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