代償 1
ある高校のあるクラス。
このクラスは校内でも一番結束力の強いクラスと言われていた。
担任の杉本康人以下38人の生徒たち。
クラスメイト同士とても仲が良く、喧嘩は滅多に起こらなかった。
行事のときはその結束力を存分に活かし、
素晴らしいパフォーマンスを見せてきた。
杉本もこのクラスの担任であることを誇りに思っていた。
しかし卒業式を目前に控え、クラスは重苦しい空気に包まれていた。
この日杉本は、急遽ホームルームの時間を作った。
1人の生徒が、ある日を境にして学校にこなくなってしまった。
「…どうするんだ?このままでいいのか?」
杉本が生徒たちに問いかける。
生徒たちは皆俯いて考え込んでいる。
いつも明るい笑い声に包まれていたクラスを、気まずい沈黙が支配する。
「このクラスは38人そろって、初めて成り立つんじゃないのか?」
「…このままじゃ、だめだと思います。やっぱり、卒業式には篤史にも来てもらわないと…」
学級委員の高橋一晃が口を開く。
クラスのリーダーとして、今の状況のまま卒業を迎えるわけにはいかない。
杉本組は杉本組らしく、全員揃って明るく卒業したい。
「私もそう思う。38人いない杉本組なんで嫌だ!」
「俺も!」
「篤史もクラスの一員なんだから、一緒に卒業しなきゃ意味ないじゃん!」
クラスの全員が立ち上がった。
吉原篤史。クラスではいわゆる「いじられキャラ」のポジションで、
皆から親しまれていた。
彼の言動が一瞬の間の後に爆笑を誘ったり、天然ボケのような発言も
多く、篤史は一躍クラスのムードメーカーになった。
篤史自身もいじられキャラとしてクラスの雰囲気を良好に保つために
頑張っていたように思えた。
売れている芸人のネタを真似してすべったり、たまに意味不明な発言をしたり。
篤史は面白いだけでなく、優しかった。
誰かが困っていれば、必ず元気付けようとした。
不器用ではあるものの、篤史の優しさに励まされた生徒は多かった。
しかし
ある出来事をきっかけに、篤史はクラスを捨てた。
「でも…篤史のことは、俺達にも責任あるよな…」
一人の男子の発言で、教室が再び沈黙に包まれる。
続く
このクラスは校内でも一番結束力の強いクラスと言われていた。
担任の杉本康人以下38人の生徒たち。
クラスメイト同士とても仲が良く、喧嘩は滅多に起こらなかった。
行事のときはその結束力を存分に活かし、
素晴らしいパフォーマンスを見せてきた。
杉本もこのクラスの担任であることを誇りに思っていた。
しかし卒業式を目前に控え、クラスは重苦しい空気に包まれていた。
この日杉本は、急遽ホームルームの時間を作った。
1人の生徒が、ある日を境にして学校にこなくなってしまった。
「…どうするんだ?このままでいいのか?」
杉本が生徒たちに問いかける。
生徒たちは皆俯いて考え込んでいる。
いつも明るい笑い声に包まれていたクラスを、気まずい沈黙が支配する。
「このクラスは38人そろって、初めて成り立つんじゃないのか?」
「…このままじゃ、だめだと思います。やっぱり、卒業式には篤史にも来てもらわないと…」
学級委員の高橋一晃が口を開く。
クラスのリーダーとして、今の状況のまま卒業を迎えるわけにはいかない。
杉本組は杉本組らしく、全員揃って明るく卒業したい。
「私もそう思う。38人いない杉本組なんで嫌だ!」
「俺も!」
「篤史もクラスの一員なんだから、一緒に卒業しなきゃ意味ないじゃん!」
クラスの全員が立ち上がった。
吉原篤史。クラスではいわゆる「いじられキャラ」のポジションで、
皆から親しまれていた。
彼の言動が一瞬の間の後に爆笑を誘ったり、天然ボケのような発言も
多く、篤史は一躍クラスのムードメーカーになった。
篤史自身もいじられキャラとしてクラスの雰囲気を良好に保つために
頑張っていたように思えた。
売れている芸人のネタを真似してすべったり、たまに意味不明な発言をしたり。
篤史は面白いだけでなく、優しかった。
誰かが困っていれば、必ず元気付けようとした。
不器用ではあるものの、篤史の優しさに励まされた生徒は多かった。
しかし
ある出来事をきっかけに、篤史はクラスを捨てた。
「でも…篤史のことは、俺達にも責任あるよな…」
一人の男子の発言で、教室が再び沈黙に包まれる。
続く
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