携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> ミステリ >> 欲望という名のゲーム?61

欲望という名のゲーム?61

[426]  矢口 沙緒  2010-07-17投稿



「何が偽物の手掛かりだ!
ふざけやがって!」
明彦が怒鳴り散らした。
それを見て、深雪がケラケラと笑う。
「非常に無駄な重労働、とも言ってましたね」
喜久雄が追い討ちをかけるように笑いながら言った。
明彦はテーブルをドンと一回叩いて、そのまま食堂を出ていった。
「さぁ、僕達も部屋に帰るか」
喜久雄と友子も食堂を出る。
そして、鹿島もビデオを持って出ていった。
深雪は食堂に残って煙草を吸いながら、一人でレモンパイを食べている孝子を見ていた。
この子をなんとか仲間に出来ないものか?
深雪はそう考え始めていた。
頭がいいのか、勘がいいのかは分からないが、少なくともこの子は、今までに二つの事を言い当てた。
まず、あの白のクイーンを雅則兄さんが隠した事、そして『パブロ』が『ピカソ』の暗示である事。
孝子をなんとか仲間に引き込めれば、きっと有利になるはずだ。
しかし、それには問題がある。
肝心の孝子が、ちっとも宝探しに興味を示さない事だ。
深雪には、お金に興味を示さない人間がいるなど、信じられなかった。
彼女が生きてきた世界では、そんな事は有り得なかった。
だが、この子はどうだ。
全く宝探しをしようとしない。
毎日図書室にこもりっきりで、本ばかり読んでいる。
このレモンパイのヒントにしたって、全然メモなどしなかった。
単に食べ物としてしか見ていないのだ。
「ねぇ、あんたお金欲しくないの?」
深雪が孝子に聞く。
「私はアイスクリームを買うだけのお金があれば、それでいいの」
「あんた、変わってるね。
お金がたくさん手に入れば、いくらでもアイスクリームなんか食べられるじゃない」
「でもね、二百八十億円分のアイスクリームは、食べきれないわよね。
だって、お腹こわしちゃうもん」
孝子はそう言うと、席を立った。

感想

感想はありません。

「 矢口 沙緒 」の携帯小説

ミステリの新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス