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代償 10

[757]  デフレーター  2010-07-17投稿
「その度に俺の方見て笑ってたけどさ、俺だってあんたらのこと心の中で笑ってたからな。」
「…それは…」
「お前ら所詮臆病者の集まりなんだよ。多数派が出てくるとすぐそっちに流されやがる。自分の意思なんて持ってないし持つつもりもない。嫌われたくねーから。仲間外れになりたくねーから。」
「そんなこと…」
恵梨が口を開いた。
「そんなことねぇって?じゃあこの状況はなんなの?」
「…」
「口では一応謝って、それでも卒業式は皆一緒に?所詮群れることしかできねぇんじゃねーか。」
「違う。」
一晃が顔を上げる。
「俺達は、口先だけで謝ってるんじゃない。心から謝罪したいから、こうしてここに来たんだ。」
「へー…さすが口だけは達者だな。かっこつけ。」
篤史は一晃のことを「かっこつけ」と呼んだ。
一晃は顔色を失った。
「お前も所詮弱虫のくせに学級委員なったとたんに綺麗事ばっか並べてたもんな。クラスをまとめるだの団結しようだの。」
一晃には返す言葉がなかった。内心で、心のほんの片隅で思っていたことをズバズバと指摘されていた。
「お前は所詮周りが支えてくれないと何もできねぇ臆病者のかっこつけだ。」
篤史は一晃に顔を近づけた。
「俺は…何を言われても構わない…ただ…俺達の謝罪の意思は…受けとって欲しい。」
そう言うと、一晃はビデオレターを収録したDVDを篤史に渡した。
「クラスの皆で、一人ずつ篤史への謝罪の言葉を収録したの。これを見れば、私達が本気だって分かってくれると思う…」
清香が篤史を見つめて言った。
「何だこんなもの。」
篤史はDVDを床にたたき付けた。ケースが割れ、DVDに傷がつく。
「何するんだよ!」
一晃が思わず篤史に詰め寄る。
「酷い…酷いよ…」
恵梨は思わず泣き出してしまった。
それでも篤史は平然と言ってのける。
「お前ら筋金入りのバカだな。こんなことして俺が騙されるとでも思った?ドラマの見すぎだろ。」
そう言うと、泣いている恵梨に近づき、言った。
「で?このことまたメールで広めるのか?クソギャル。」
篤史は誰のことも名前で呼ぼうとはしなかった。
一同は悲しさともどかしさで俯いてしまった。



続く

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