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代償 14

[1009]  デフレーター  2010-07-19投稿
「…結局、篤史に許しを貰うことはできなかった。」
翌日のホームルームで杉本は生徒達に報告した。
「仕方ないかな…」
「…」
生徒達はこの結果を半ば覚悟していたものの、改めて現実を突き付けられると、とても苦痛だった。
「篤史…俺達の話し、全然聞いてくれなかった。」
「篤史の言ってたこと…全然間違ってなかった…でも…」
「皆に聞いてほしいことがある。」
杉本の言葉に、生徒達は耳を傾けた。
「このクラスは、とてもまとまりがあって、仲が良くて。先生も自慢のクラスだった。でも今考えれば…篤史の言う通り、本来のクラスの姿ではなかったのかもしれない。」
生徒達は今までにないほど真剣な表情だった。
「クラスがまとまることばかりを考えて一人一人の意見を尊重しないばかりに、篤史のような被害者を出してしまったんだ…」
杉本は涙を浮かべながら生徒達に訴えた。
「君達は、もう少しで別々の道を歩むことになる。どうか…相手を本当に思いやるということ…一人一人の気持ちを大切にするということを、忘れないでほしい。
そして…篤史にしてしまったことを、どうか忘れないで、生きていってほしい…」

杉本組は、一人が欠けた状態で卒業式を迎えた。
生徒達の間には、卒業の喜びや、仲間と離れる悲しみはなかった。
ただ途方もない罪悪感と、喪失感だけが残った。


篤史たちの一家は、誰にも行き先を告げずに引っ越した。
篤史は大検を受験し、知り合いが一人もいない地元の大学に入学し、杉本組のことを記憶から完全に抹消したかのように充実した大学生活を送っている。


クラスの偽りの団結力の代償は、あまりにも大きかった。



終わり

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