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欲望という名のゲーム?67

[494]  矢口 沙緒  2010-07-21投稿



「きっとこの中のクイーンに、何か手掛かりがあるはずよ」
深雪は興奮してそう言うと、テーブルの上にトランプを広げた。
「こ、これだわ!
これが手掛かりよ!」
深雪が指差したダイヤのクイーンには、なんと髭が書き込んであった。
「姉さん、すごい!
とうとう見付けたわね。
…ところで、この髭なぁに?」
「分かんないわよ。
これから考えるのよ。
あんたはどう思う?」
「全然分からない」
二人は、髭のある女王様を間に挟んで、すっかり考え込んでしまった。
「ねぇ、孝子。
ハートとかクラブじゃなくって、ダイヤのクイーンにだけ髭があるって事がポイントかしら?」
「うーん、それはどうかしら。
ダイヤのマークっていうのは、貨幣の象徴だって聞いた事があるの。
この場合の貨幣は、財産を差してると思うんだ。
だからそれを暗示して、ダイヤのクイーンにだけ髭があるんじゃないかしら」
「ダイヤがダメとなると、残るはこれよね」
深雪はトランプの裏側、ピカソの『ゲルニカ』を示した。
「これ、いったい何の絵なの?」
「これはね、『ゲルニカ』っていって、戦争の絵よ」
しかし、『ゲルニカ』という言葉にも、『戦争』という言葉にも、特別な連想は浮かばなかった。
「じゃ、あたしの言う事を、笑わないで聞いてくれる?」
深雪がおそるおそる言い出した。
実は彼女は、最初にこのカードを見た瞬間、ピンときたものがあった。
職業的直感とでもいうのだろうか、彼女の住む世界では、すぐに連想できる事であった。
だが、この屋敷の中では、あまりにも場違いな感じがして、それでなかなか言い出しにくかったのだ。
「姉さんが何を言っても笑わない。
天国の雅則兄さんにも誓うわ」
「あのね、このカードを最初に見た時に、手掛かりは『おかま』かと思ったの」
そのとたんに、孝子がケタケタと笑い出した。

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